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101-2

 そしてヘルメットの青年のうしろには金髪の少女がいた。

 まさか人が乗っているとは思いもよらず、俺たちはあんぐりと口を開けていた。

 ヘルメットの青年と金髪の少女が昇降機から出てくる。


「このビルは関係者以外立ち入り禁止だ。出ていけ」


 槍の矛先を向けてくるヘルメットの青年。

 俺たちは慌ててうしろに下がった。

 その表情と口調から、腹を立てているのが容易にわかる。


「いきなりそれはひどいわよ、ケイ」

「イリス……」


 イリスと呼ばれた金髪の少女が槍の柄をつかんで下ろさせる。

 そしてにこりと微笑んだ。


「彼らは私たち『サンブロス』のファンかもしれないわ。ラジオの放送日が待てなくてビルまで来ちゃったのよ、きっと」

「……だとしら、邪険には扱えないな」


 ケイと呼ばれたヘルメットの青年が冷静さを取り戻す。


「お前たち、ケルタスの住人か? 俺たち『サンブロス』のファンなのか?」

「え、えーっと……」


 困った俺たちは互いに目配せしあった。


 二人は何者だ?

 だいたい『サンブロス』ってなんだ?

 ラジオってなんだ?


 さっきからわからないことだらけだった。


「とりあえず、どっちも違うと思います」

「……」


 ケイがふたたび矛先を向けてくる。


「なら出てけ。不法侵入者どもめ」


 塔から追い出されてしまった。


「なんなんですの!? あの方たちは!」


 憤慨するマリア。


「思いっきり邪険に扱われたのう」

「怪しい輩は自分たちではありませんこと!?」

「『サンブロス』とは団体の名前でしょうか」

「聞いたことないのじゃ」

「二人は『ラジオ』っていうのをやろうとしているらしいが……」


 単なる印象でしかないが、ケイとイリスは悪党には見えなかった。武装はしていたが。

 推測すると、二人はこの塔を占拠して『ラジオ』をしようと企んでいる。

 その『ラジオ』とやらがなんなのか……。


「アッシュ。力ずくでも『サンブロス』のラジオを阻止しますわよ」

「いや、相手は人間だ。話し合いの余地があるのならそれは捨てるべきじゃない」

「でも、ラジオが危険な行為だとしたら見過ごせませんわ」

「『サンブロス』にもう一度会ってみよう」


 ところが塔の入り口のガラス扉は自動では開かなくなっていった。

 ケイとイリスが開閉機能を止めたのだろう。


 手動で開けるものではないため取っ手はついていないし、つるつる滑るし、開けるのにも難儀する。

 破壊したり魔法でこじ開けたりすることはできるが、そうすると余計に俺たちに敵意を向けるかもしれない。



 いったん俺たちはケルタスの街に引き返し、ギルドにこの件を報告した。

 これからどうするかはギルドで決めるという。

 なかなかの報酬を手にして『夏のクジラ亭』へと帰った。

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