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後日、俺とプリシラとスセリとマリアの四人で塔へと赴いた。
セヴリーヌは興味がないらしく、家に残るとのこと。
塔は遺跡群の中心に、王のごとくそびえ立っていた。
かなり背が高い。
首が疲れるくらい俺たちは顔を上げて塔を仰いでいる。
遺跡群には『ビル』と呼ばれている古代文明の塔がいくつもあるが、今回出現した塔はそのなかでもひときわ背が高い。
これが地面からせり出してきたのか……。
「さて、さっそく中に入ってみよう」
「待ってください、アッシュさまっ」
俺が塔の入り口のガラス扉を開けようとしたとき、プリシラがそれを止めた。
プリシラは恥ずかしそうに上目づかいでもじもじしている。
「そ、その……。扉を開けるのはわたしにまかせていただけませんか?」
「あ、ああ……。いいぞ」
「ありがとうございますっ」
罠でも仕掛けられているのか……?
プリシラは数歩前に出て扉の前に立った。
ガラスの扉は触れることなく左右に開いた。
「楽しいですね、自動ドア!」
くるりと振り返ってきたプリシラは目をきらきらと輝いていた。
12歳だもんな。こういうのが楽しい年ごろなのだろう。
プリシラが後ずさる。
ガラスの扉が閉まる。
再び前に出るプリシラ。開く扉。
「楽しいですーっ」
「い、いつまで遊んでおるのじゃ……。行くぞ」
辛抱できなくなったスセリが一番に塔の中へと入っていった。
塔の内部。
冒険者ギルドの話によると、機械式の昇降機が動かないため、一階のフロアしか調査できてないという。
階段も天井が崩落していて登れないらしい。
塔の正体をつかむには上の階に上る必要があるは間違いない。
俺たちは昇降機の出入り口の前までやってきた。
「よし、アッシュよ。おぬしの魔法で昇降機を起動させるのじゃ」
万能たる魔書『オーレオール』の魔法ならば昇降機を生き返らせることも可能だ。
俺は昇降機の操作盤に手を触れる。
そして精神を集中させる。
魔書『オーレオール』から流れてくる魔力を受け取って、それを昇降機に流し込む。
しばらくすると、昇降機のスイッチと階数を示す頭上のパネルが点灯した。
これで昇降機が使えるようになった。
「おぬしも随分と『オーレオール』を使いこなせるようになったの」
「スセリに追いつけたか?」
「うぬぼれてはいかんぞ。のじゃじゃじゃじゃっ」
5、4、3……と頭上のパネルの点灯している数字が変わっていく。
昇降機が下りてきている。
そして1になると扉が開き、昇降機が俺たちを手招きした。
……が、思いもよらぬことが起きた。
「お前らか! エレベーターを起動させたのは!」
昇降機にはすでに人が乗っていたのだ。
鉱山労働者のヘルメットをかぶった青年。
手には短槍を持っている。




