表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

699/842

100-4

 かわいい寝顔だ。

 彼女を起こさないよう、そっとおぶる。

 小さな身体に軽い体重。


 彼女の心地いいくらいの体重を感じながら帰路に着く。

 寝息が首筋にかかってくすぐったい。


「えへへ……。アッシュ……」

「うん?」

「もう食べられないぞ……」


 なんだ、寝言か。


「ずっとアタシといてくれるのか……? やったー。……むにゃむにゃ」


 罪悪感をおぼえてしまう。

 逆にセヴリーヌを『シア荘』に招こうか。

 プリシラとマリアなら歓迎してくれるはず。スセリもたぶん。



 翌朝。

 セヴリーヌはケルタスに帰ることになった。

 そしてスセリの風邪はすっかり治っていた。


「もう少し王都に滞在してはいかが?」

「ウルカロスやクラリッサにはすぐ帰るって伝えてるんだ。長い間不在にはしたくない」


 セヴリーヌが他者を気にかけていることに少し驚いてしまった。

 いくら精神が子供のままの彼女でも、それくらいのことは考えられるか。


「じゃあな、アッシュ」


 右手を掲げるセヴリーヌ。

 青い魔力が手のひらに集中するのが視覚でわかる。

 転移魔法を使うつもりだ。


「待て!」

「なっ!?」


 俺はそれを阻止した。

 セヴリーヌがずっこけると、集中していた魔力が大気中に霧散した。


「な、なんだよアッシュ。アタシと別れるのがイヤなのはわかるが……」

「いや、そうじゃなくて……。転移魔法は使わないでほしいんだ」

「なんでだよ」


 ふしぎそうに首をかしげる。


「転移魔法は危険だからやめたほうがいい」

「とある魔術師は失敗して、全身の毛という毛をその場に残して転移したらしいのじゃ。のじゃじゃじゃじゃっ」


 それは恐ろしい……。


「おぬしもうっかり失敗して、全裸でケルタスの街中に転移でもしたら大恥じゃぞ」

「うーん、街に素っ裸でいたら憲兵に捕まりそうでめんどいな」


 それより先に羞恥心を感じてほしい。


「それにせっかくですから船旅を楽しんではどうですか? セヴリーヌさま」

「そうだな。たまにはいいかもな」


 さいわいにも当日の出航のチケットは残っていた。

 王都からケルタスまでの船旅は日数がかかるから、帰りが遅くなる旨をウルカロスに伝えた。


「承知しました、セヴリーヌさま」

「クラリッサとヴィットリオにも伝えておいてくれ」

「ええ。よい旅を」


 セヴリーヌの従者であるゴーレムのウルカロス。

 彼はセヴリーヌによって改造され、端末と通信できる機能が搭載されていたのだ。


「船旅か。なんだかわくわくしてきたぞ。なあ、お前もだろ? アッシュ」

「お、俺?」


 俺は自分を指さす。

 俺は別にわくわくしてはないが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ