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99-7

 王族にその腕を認められた者としてのこだわりがあるのだろう。

 俺とプリシラはフレデリカの依頼を受けることにしたのだった。



 王都周辺の森。

 木々が生い茂る森の中を、落ち葉を踏みしめながら歩く俺とプリシラとフレデリカ。


 木漏れ日が差し込み、小鳥がさえずる穏やかな空間。

 そして土と葉のにおいが心を落ち着かせてくれる。

 散歩するにはうってつけだ。


「あ、野イチゴですっ」


 プリシラが草むらの前でしゃがみ込む。

 そこには赤い野イチゴがいくつもなっていた。

 しかし、フレデリカは首を横に振る。


「この辺にあるのはあんまりおいしくないんだよねー」

「そうなのですか」

「もっと森の奥に行けばおいしい野イチゴがあるんだよ」

「ですが、あまり奥へ行きすぎると魔物が出るかもしれませんよ」

「そのためにプリシラたちを雇ったんじゃない」


 そういうわけで、さらに森の奥へと進む。

 上を見上げると、陽の光を少しでも多く浴びようと、木々が競って背を伸ばして葉を広げている。

 そのせいで地面に届く陽光はわずかで薄暗い。


「不老不死かー。いいなー」


 フレデリカがつぶやく。


「私も不老不死になりたいなー」

「厳密には、スセリは不老不死じゃないけどな」


 スセリは魂を別の肉体に移すことで疑似的な不死身となっている。

 セヴリーヌは肉体と精神の時間を凍結させて不老となった。


「アッシュさんは不老不死にしてもらえないんですかー?」

「俺は断ったよ」

「えっ」


 まんまるに見開いた目をぱちぱちさせるフレデリカ。

 そんな反応をするものしかたない。


 俺はいつか訪れる老衰をそこまで悲観していない。

 自分がまだ未成年だから実感できないだけかもしれないが。


「あいつが生み出した不老不死なんて欠陥があるに違いないだろうからな」

「うーん、確かに……」


 不老不死になったかと思いきや、ある日突然発狂して死ぬ。

 ……なんてなっては悲惨だ。

 つまるところ俺は信じていないのだ。彼女たちの確立した不老不死を。


「ラピス王女も不老不死になりたがってましたよー」


 ラピス王女は王女と呼ぶにふさわしい美貌の持ち主の乙女。

 だからこそ怖いのだろう。

 必然の運命である老いが。



 森をさらに進んでいくと泉があった。

 エメラルド色の美しい泉。

 プリシラが泉に手を入れる。


「ひゃっ、すごく冷たいですよ、アッシュさまっ」


 プリシラのとなりに並び、水面を覗き込む。

 魚がゆらゆらと泳いでいる。

 フレデリカが靴と靴下を脱いで裸足になり、座り込んで泉に足を入れた。


「うわー、これめちゃくちゃ気持ちいいー」


 俺とプリシラも彼女のまねをして泉に足を入れたのだった。


「えへへ、気持ちいいですね」


 プリシラはごきげんだ。

 12歳の少女相応に足で水面をぱちゃぱちゃさせて遊んでいる。

 プリシラの足、細くて白くてかわいらしいな。


 そうやって三人ともリラックスしていたときだった。

 突如、火薬の炸裂するような音が連続して鳴り響き、穏やかな時間を破った。

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