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99-4

「アッシュさま。今、いい加減にリンゴを取ろうとしましたね」


 プリシラは真剣な表情をしている。


「リンゴにも良し悪しというものがあるのです。しっかりと見極めて選ばないといけませんっ」

「わ、わかった……。プリシラ、頼む」

「おまかせくださいっ」


 プリシラが胸を張ってうなずいた。

 鋭いまなざしで、ためつすがめつリンゴの山を見つめるプリシラ。

 俺は隣でじっと待つ。


 ……結構、いや、かなり長い時間、プリシラはリンゴの山とにらめっこしている。

 目の前に座る店主も苦笑いしている。

 俺も実のところ退屈だった。


「プリシラ。いいのは見つかったか?」

「うーん、そうですね……」

「そ、そろそろ決めてほしいんだが……」

「では、これにしましょう」


 山の中にあるリンゴのひとつを手に取った。

 俺と店主は同時に安堵の息をついた。


「お嬢ちゃん、いいのを選んだね」

「てへへー」


 俺には有象無象のひとつにしか見えないが、店主がそう言うのならきっといいものなのだろう。

 それからプリシラはもう二つ、リンゴを選んだ。

 合計三つ、俺たちはリンゴを買ったのだった。


「がんばって選んだお嬢ちゃんのために安くしておくよ」

「ありがとうございますっ」

「お嬢ちゃん、貴族のメイドさんかい? そっちの彼がおぼっちゃんか」

「実はこちらの方、ランフォード家のお方なのですっ」

「へー、そうかい」


 適当にあいづちをうつ店主。

 まあ、普通の人にランフォード家なんて言ってもわからないだろう。

 プリシラは自慢げなドヤ顔をしていた。



 そのあとは薬屋へ。

 医者から受け取っていた処方箋を薬師に渡す。


「王都では直接お医者さんがお薬をくれるわけじゃないんですね」

「医者は医学の専門家で、薬学の専門家じゃないからな」


 法律では医師が直接薬を処方するのは禁じられているのだが、田舎では昔からの風習が根強く、医者が直接患者に薬を与えているところが多いらしい。


「お待たせしました。こちらがお薬になります」


 薬師が薬を持ってくる。


「お薬を飲む方の年齢はおいくつですか?」


 そう尋ねられて俺は悩む。

 この場合、肉体的な年齢だよな……。


「えっと、12歳です」


 スセリが聞いたら腹を立てるだろうな……。


「でしたら、一度に飲むのは一錠までにしてください」



 さて、用事は済ませた。

 あとはスセリとマリアの待つ『シア荘』に帰るだけだ。

 薬屋を出て帰路に着こうとしたところ、顔見知りに会った。


「あー、アッシュさんにプリシラじゃないですかー」


 宿屋『ブーゲンビリア』の看板娘フレデリカだった。

 学校の制服を着ている。

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