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99-2

 スセリがあくどい笑みを浮かべる。


「プリシラもマリアも、実は虎視眈々と狙っておるのじゃろう? 相手を出し抜き、アッシュを我が物にせんと」

「わたくしたちの友情に亀裂を入れるまねはやめてくだらない!?」


 本当に意地悪だな、スセリは……。


「のじゃじゃじゃじゃっ。のじゃ――こほっ」


 高笑いしていたスセリが咳をする。

 己の体調の違和感に眉をひそめるスセリ。


「ん……? こほっ、こほっ」

「どうした? スセリ」

「なんだかのどがイガイガするのじゃ。こほっ、こほっ」

「変な笑いかたをしてるからじゃないか?」

「笑いかたは関係ないじゃろ……」


 スセリは何度も咳をする。


「風邪を引いたのではありませんこと?」

「うーん、風邪を引くようなことをしたおぼえはないのじゃがのう」


 いや、俺には心当たりがある。

 プリシラとマリアには秘密にしているが、スセリはわりとしょちゅう、夜中に俺の部屋に忍び込んできて一緒に寝ようとしてくるのだ。


 そして彼女は寝るとき、パジャマを脱いで下着姿になるのである。

 ひどいときは全裸だ。

 そんな格好で寝ていてはいつか風邪を引いてもおかしくない。



 翌朝。


「スセリさま、部屋から出てきませんね」


 朝食の時間になってもスセリは部屋から出てこなかった。

 心配になって彼女の部屋の前に行くと、ドア越しにゴホゴホと咳をする声が聞こえてきた。

 ドアをノックする。


「スセリ、だいじょうぶか?」

「だいじょうぶではないのじゃ……。ゴホッ、ゴホッ」


 部屋に入ると、スセリはベッドに横たわってしきりに咳をしていた。

 顔を覗き込む。

 真っ赤だ。


 額に手を当てると、かなり熱かった。

 明らかに熱が出ている。

 スセリは風邪を引いていた。


 俺は食卓に戻るとプリシラとマリアに説明し、冷たい水をもらった。

 スセリはすぐに水を飲みほした。


「感謝するのじゃ」

「しばらく安静にしていろ」

「うむ……。ゴホッ」


 それにしてもつらそうだ。

 すぐに薬を飲ませてあげないと。

 いや、それよりも……。


「スセリ。魔法で風邪を治すことはできないのか?」

「……結論から言えば『できる』のじゃ。医療魔法は禁呪級の超高位魔法じゃが、魔書『オーレオール』があればできるじゃろう。じゃが」


 スセリは言う。


「魔法は使わん。自力で治す」

「どうしてだ?」

「この際じゃから免疫を獲得するのじゃ」


 メンエキ……?

 聞きなれない言葉に俺は首をかしげる。


「人間の身体というものは、病にかかるとそれ以降、その病に対する耐性を獲得するのじゃ。それを免疫という」

「つまり、自力で風邪を治して免疫を手に入れると?」

「うむ」

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