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99-1

 とある日の『シア荘』にて。

 俺とプリシラ、スセリ、マリアの四人は午後のティータイムを楽しんでいた。

 今はスセリが過去の竜退治を自慢げに語っている。


「ワシとセヴリーヌの二人で竜に挑み、死闘の末に退治したのじゃ」

「スセリさまとセヴリーヌさまは昔から仲がよかったのですね」

「いや、まったくよくないのじゃ。ワシらの仲は昔から険悪じゃった」


 セヴリーヌはスセリの古くからの友人。

 ……なのだが、スセリがセヴリーヌの恋する相手を横取りしたため仲違いをしたのだ。


 しかし、よりにもよってどうして友人の想い人を横取りしたのか……。

 と言いたいのだが、スセリがそうしなかったらアッシュ・ランフォードなる人物はこの世に生まれていないから複雑なところなのである。


「そういえばアッシュよ。おぬし、今でもまだセヴリーヌと文通しておるのか?」

「ああ、しているぞ」

「ほう、セヴリーヌのやつ、とっくに飽きてしまったと思ったのじゃが」

「飽きたどころか、逆に少しでも返事が遅れると端末から電話をかけてくるくらいだ」


 俺は手紙が届いた翌日にはしっかり返事を書いて郵便に出しているから、彼女のもとに手紙が届くのが遅れるのは輸送上の都合なのだが、なぜかセヴリーヌは俺を非難する。


「アッシュも災難じゃのう。あんなやつに懐かれてしまって」

「いや、俺はうれしいぞ」

「ほう」


 不老の魔法で幼い姿と精神のまま時間が止まってしまった少女セヴリーヌ。

 彼女は自己中心的でわがままで、他人の気持ちを察するのに少々欠けているところがある。

 だが、彼女の好きなものを好きだとはっきり言う、裏表のない性格は、それらを打ち消すほどの美点だ。


 セヴリーヌに好かれて俺はうれしい。

 彼女には申し訳ないが、恋愛感情は抱いていないが。


「なら、あやつと真逆の性格のワシは苦手なんじゃろうなー。あーあ」

「なにふてくされてるんだよ」


 俺はため息をつく。

 たぶん、彼女はこの言葉を待っているのだろう。


「スセリのことも好きだぞ」

「おお! そうかそうか。ならもちろん、キスもしてくれるじゃろうな」

「スセリさま!」

「スセリさま! ずるいですわよ!」


 プリシラとマリアが声を上げた。

 スセリがどうやってセヴリーヌからリオンさんを横取りしたのかなんとなく想像できた。


「わたくしとプリシラは抜け駆けしないという協定を結んでいますの。スセリさまもそれに従ってもらいますわよ」

「別にかまわんが、おぬしらも甘いのう。条約や協定というのは破られるために存在するのじゃぞ」

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