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98-5

「シュロ」

「イルルお姉さん」


 イルルがかがんでシュロと目線を合わせる。


「こちらのブレイクさんが私たちに家をくださるそうです」

「家? 住むところをくれるの?」

「そうです。シュロ。私と共に暮らすことはできますか?」

「……」


 黙り込むシュロ。

 悩んでいるわけではなさそうだ。


 ただ、彼女の言葉の意味を頭の中で整理しているようす。

 その証拠に、しばらくするとシュロは笑顔で頷いた。


「私、イルルお姉さんと暮らす」

「その返事が聞けてうれしいです」


 言葉どおり、イルルもうれしそうだった。

 その感情表現はとても機械人形とは思えなかった。

 イルルも心を持った人間なのだ。


「シュロ。私たちはまだ出会ったばかり。互いのことはほとんど知りません。共同生活をしていくうちで不和が生じることもあるでしょう。それでもきっと、私たちは乗り越えていけると思います。それを信じて暮らしていきましょう」

「うん」


 イルルはそう言うが、二人ならきっと理想的な家族になれるだろう。

 なんとなくだかが、イルルは立派なお姉さん、もしくはお母さんになれそうだ。

 シュロもすなおでいい子だし。


「ところでブレイクさん。共同生活をするもう一人の子がいるらしいですけど、誰なんですか?」

「ああ、それはキミたちもよく知っている子だよ」



 ヴォルクヒル北門の跳ね橋。

 そこには今日も竜と少女がいた。


「あっ、アッシュさんにブレイクさんだ」


 竜――エルドリオンのそばにいた少女ミリアが俺たちのもとへと駆け寄ってくる。


「わたしの新しいおうち、見つけてくれたの?」

「うん。ちょうどいい物件があったよ」


 ブレイクさんが言っていた、共同生活を送るもう一人の子。

 それがミリアだった。


「それで、この人がキミの保護者となるイルルだ」

「イルルです。ミリア。よろしくお願いしますね」


 ブレイクさんがイルルを紹介すると、イルルは軽くおじぎをした。

 ミリアも慌てておじぎをする。


「ミリアです。よろしくお願いしますっ」

「会ってばかりで判断材料はないでしょうが、私を保護者として認めてくれますか?」

「もちろんですっ。ブレイクさんやアッシュさんのお友達ならきっといいひとだもんっ」


 ミリアがもう一人の存在に気付く。

 イルルの背後にそっと立っていたシュロ。


「この子はシュロです。シュロも私たちと共に暮らすのです」

「そうなんだー。はじめまして、シュロちゃんっ」

「はじめまして、ミリアちゃん」

「わー、長くてきれいな髪だね。うらやましいなー」

「えへへ……」


 ミリアは積極的にシュロと関わり合おうとしてくれている。

 見る限りでは相性はよさそうだ。


「ねえ、シュロちゃん。わたしがお姉ちゃんでいい?」

「いいよ。私が妹だね」

「やったーっ。わたし、妹が欲しかったんだー」


 微笑ましい光景だ。

 ブレイクさんも安心した面持ちをしている。

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