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97-7

 そして今、俺たちはスセリが作った異世界にいた。

 以前、セヴリーヌたちとボードゲームをしたときのように、スセリはいともかんたんに異世界を魔法で作り出したのだった。

 周囲は廃墟。ビルと呼ばれる古代文明の塔がいくつもある。


 彼女が言うに、異世界を廃墟にしたのに深い意味はないらしい。

 別に真っ白な世界でもよかったのだが「そのほうが雰囲気が出るじゃろ」とのこと。


 異世界をきょろきょろと見渡すのは俺とスセリ、プリシラにマリア。そして機械人形のイルル。

 ブレイクさんにはもしものときのために、現実世界のほうで待ってもらっている。


「それにしても、もう一刻の猶予もなかっただなんて」


 イルルが抱えている魔王のたまご。

 その殻にはすでに亀裂が走っていたのだ。

 孵化は間もない。


「こ、ここから魔王が生まれるのですね……」


 ぞっとした表情のプリシラ。


「ひょっとすると今日が世界滅亡の日になるかもしれんの」

「縁起でもないことを言わないでくださいまし」

「じゃが、全員無事で解決するとは思わんことじゃな」

「お、おどさないでくださいっ。アッシュさまがいる限り、わたしたちは誰一人として失いませんっ」


 プリシラが俺のほうを向く。


「ですよねっ、アッシュさまっ」

「ああ」


 本当のところは俺だって無傷で魔王に勝てるとは思っていない。

 それでも俺はみんなを安心させたかった。


 ほっとするプリシラにマリア。

 スセリは「やれやれ」と肩をすくめていた。


「みなさん、魔王が生まれようとしています」


 イルルの抱えているたまごがうごめいている。

 おぞましい、邪悪な気配を感じているのは俺だけではないはず。

 プリシラとマリアが俺の服の裾をつかんでくる。


「イルル。たまごを置いてくれ」

「かしこまりました」


 イルルは俺たちから少し離れ、平らな場所に魔王のたまごを置いて戻ってきた。

 たまごが孵化する瞬間を、固唾をのんで待つ。

 たまごは不気味にうごめいている。


 ピシッ、ピシッ、と次々と殻にヒビが走っていく。

 おそろしいことに、ヒビの隙間から瘴気のような黒いもやが漏れ出てきている。

 邪悪なる王の誕生を演出しているかのよう。


 次の瞬間、亀裂の入る速度がいきなりすさまじい勢いになりだした。

 それに合わせ、黒いもやも夜をもたらすかのように勢いよく噴出していく。


「アッシュさま!」

「アッシュ!」

「みんな、俺の後ろに隠れるんだ!」


 黒いもやは一気に周囲に立ち込めていき、異世界を闇で包んだ。

 真っ暗闇となり、完全に視界を奪われてしまった。

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