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10-4

 翌朝。

 俺とプリシラ、スセリ、ディアの四人はセヴリーヌのいる灯台の家へと向かった。

 途中、冒険者ギルドに立ち寄ってセヴリーヌの情報を聞いてみたところ、やはりギルドもセヴリーヌを知っていた。住んでいる場所もクラリッサさんが教えてくれたとおりだった。


「セヴリーヌさんのところへ行かれるのですか?」


 ギルドの受付嬢が心配そうに尋ねてくる。


「気をつけてくださいね。少々変わったお嬢さんですから」


 ――『少々』で済むほど甘くはないぞ、あやつは。


 魔書『オーレオール』の中にいるスセリが苦々しげに忠告してきた。


「スセリさま、セヴリーヌさまとお友だちなんですよね?」


 ――前も言ったが、悪友のたぐいじゃ。


 なんか意味深だな……。


 ――一筋縄ではいかんぞ、あやつは。


 嫌な思い出を思い出しているときの口調だった。



 冒険者ギルドを出た俺たちは西区の門からケルタスの外に出て、海岸線に沿って引かれた街道を歩いてセヴリーヌのいる灯台を目指した。

 この海沿いの街道は近隣の都市と接続しているからか多くの人々が往来している。旅行者や冒険者、商人などなど……。馬車もときおり蹄鉄の固い音と車輪の回る音を鳴らして俺たちのそばを横切っていった。


「賑やかできれいな道ですね」


 ディアが目を細める。


「海がきれいですー」


 プリシラの言うとおり、右手に広がる海原を眺めながら道を歩くことができる。

 海は青く透き通っており、日差しを乱反射させて輝いている。

 風に乗って漂ってくる潮のにおい。

 寄せては返す波の音が心地よい。

 セヴリーヌの家までの道のりは楽しいもので、足取りも軽くなり、俺たちは自然と笑顔になっていた。


「また海で遊びたいですねっ」

「ええっ!?」


 プリシラの言葉を耳にしたディアが顔を真っ赤に染める。


「わ、わたくしはもう水着は結構です……」

「似合ってましたよ。ディアさま」

「はうううう……」


 まあ、仕方ないよな。あんな目に遭ったのだから……。


 ――裸の一つや二つ見られたくらい、どうってことなかろう。


 その元凶はちっとも反省していなかった。


 と、そのときだった――。


「助けてください!」


 小さな女の子が俺たちの前に飛び出してきたのは。

 一目で貧困層の子供なのがわかる身なりを女の子はしている。


「どうしたの? お姉さんたちに話してちょうだい」


 息を切らす女の子を落ち着かせようと、ディアが女の子の目線に合わせてかがみ、やさしい声色で尋ねる。

 女の子は俺たちに向かって再び叫んだ。


「お母さんが魔物に襲われてるんです!」


 なんだって!?

 俺たちは顔を見合わせる。


「こっちです!」

「ちょっ、ちょっと待って!」


 一刻も早く母親のもとへ連れていきたいのか、女の子はすぐさま走りだした。

 街道を逸れて林へと入っていく。

 俺たちは慌てて女の子の後をついていった。

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