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97-5

「スセリさま。それは矛盾していますわよ」


 ため息をついてマリアが指摘する。


「そもそも、魔王ロッシュローブのたまごを封印するという措置を旧人類がとったのは、魔王とまともに戦ってもかなわないからでしょう? 戦って勝てるのなら、昔の人たちはとっくにたまごを割っていますわ」

「しかし、旧人類は一度、魔王ロッシュローブを倒しておる」

「甚大な被害を出しつつ、ですわ」


 マリアがそう付け足した。

 それでもスセリは平然としている。

 その指摘をあらかじめ予想していたかのように。


「古代にはなくて現代にはあるもの。それはなんじゃ?」

「いきなりなぞなぞですの?」

「答えてみるのじゃ」

「えーっと……」


 マリアが考える。

 しばらくして、肩をすくめて降参した。


「答えを教えてくださいまし」

「答えは――この『稀代の魔術師』じゃ」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべるスセリ。


「それと」


 そしてさらに俺を指さした。

 全員が俺に注目する。


「その後継者じゃ」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

「アッシュさんは魔王を倒す実力を持っているのですか?」


 イルルが質問してくる。

 答えは否、だ。

 即答だ。


 確かに俺は『稀代の魔術師』であるスセリから魔書『オーレオール』を受け継いでいる。

 魔書に宿った魔力は膨大で、その気になれば世界だって滅ぼせる。

 だが、とてもじゃないが魔王を倒すなんて不可能だ。


 極めて高度な文明を持っていた旧人類でさえ持て余したものを、俺がどうにかできるなんて思い上がりもはなはだしい。


「スセリ。俺を買いかぶりすぎだ」

「いーや、おぬしは自身を、いや、『オーレオール』を過小評価しておる」


 俺は『オーレオール』に目をやる。

 あらゆる禁断の魔法が記された怖ろしき魔書。


「ワシの最高傑作である『オーレオール』なら魔王だって滅ぼせるのじゃ」

「仮に、仮にそうだとするぞ」


 俺はいったん、彼女の言葉を認める。

 そこから反論する。


「魔王とまともに戦ったら被害も尋常じゃないと思うぞ」


 さっきもマリアが言ったように、旧人類は魔王を倒したが滅亡の原因となるほどの痛手も負った。

 魔王を倒した頃には世界は瓦礫と化していた、では意味がない。

 他者の犠牲は無視できない。


「それに関してもワシなら対処できる」

「どうするのですか? スセリさま」

「異世界で戦うのじゃ」

「異世界?」

「『オーレオール』の魔法で、一時的にこの世界と切り離した別の世界を作り出す。その中で魔王のたまごを孵化させて戦うのじゃ」


 ガルディア家が魔王の断片である四魔を異世界に封じたように、今回も異世界に魔王を封じ込め、そこで倒すという作戦か。


「封じ込めるだけではダメなのかい?」

「魔王ロッシュローブほどの悪魔なら、いずれ異世界から出てくる危険性があるのじゃ。魔王を倒す力を持つ者がいる今、倒すべきなのじゃ」

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