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97-4

「し、しかし、なぜ古代人は魔王のたまごを保管していたんだい? 研究が終わったら破壊すればよかったんじゃ」

「保管せざるをえなかったのです」


 魔王のたまごが発見されたときにはすでに、中身は幼体として成長してしまっていたのだとイルルは説明する。

 たまごを破壊した場合、孵化してしまう恐れがあった。

 だから厳重に保管するしかなかったのだ。


 地下の遺跡は魔王のたまごを封印する施設だったのだ。

 世界を滅ぼそうとした魔王の分身が眠るたまご。

 現代の俺たちには手に余る代物だ。


「つ、つまり、今すぐにでも魔王が生まれて世界を再び滅ぼそうとしてもおかしくないわけですの?」

「そのように認識していただければよろしいかと」

「ど、どうすればいいのでしょう……」


 俺たちはイルルに注目する。

 しかし、彼女はこう言った。


「あなたがたが『古代人』や『旧人類』と呼んでいる人間たちは、この問題の根本的解決をできませんでした。ですので、封印というかたちをとったのです。はるか未来、この災厄を振り払える可能性が生まれるのを信じて」

「僕たちは託された側だったわけか」


 ブレイクさんが苦笑する。

 イルルがお辞儀する。


「あなたがたにたまごの所有権を移します。どうかこの事態に対処してください」

「やれやれ、旧人類も厄介なものを押しつけおって」

「あはは……。僕たちの身にもなってもらいたいものだね」


 イルルがブレイクさんに尋ねる。


「ブレイクさま。この時代の人類に、この問題を解決する技術はあるのでしょうか?」

「……残念だけど」


 科学が発達していた古代でも無理だったのに、文明の劣る現代の俺たちが対処なんてできない。

 プリシラが俺を見つめている。


「アッシュさま、なんとかならないのでしょうか」

「火山の火口に放り込むとか……」

「たまごは高熱にも耐えられますので、マグマの中でも生存できます」


 人間が手出しできなくなって、かえって危険になるわけか……。


「地下の遺跡にたまごを戻すっていうのはどうだ?」

「施設を管理できる人間が不在なのは極めて危険です。それに、耐用年数もとうに過ぎているように見受けられました」

「なら、別の場所で再び封印するというのは」

「いや、それはできん」


 スセリが断言する。


「魔王ロッシュローブが実在するという情報が世間に知れたら大混乱に陥る。国家間の問題にもなるじゃろうし、ロッシュローブ教団も動き出すじゃろう。この件はワシらで秘密裏に解決する必要があるのじゃ」


 魔王が実在しているというのは、一部の貴族や王族、ロッシュローブ教団に属する者しか知らない。


「そ、そんな無茶な……」

「とにかく、この件が外に知られるのは断じてあってはならんのじゃ」

「責任重大ですわね……」


 とはいえ、どうすればいいのかわからず、みんな黙りこくる。

 そんなとき、スセリが平然とした口調で言った。


「いっそ孵化させればよいじゃろう」

「スセリさま!?」

「なにをおっしゃいますの!」

「アッシュ。おぬしならわかるじゃろう? ワシの考えを」

「あ、ああ……」


 もっとも単純明快かつ手っ取り早い対処方法が一つある。

 それは、魔王を孵化させて倒してしまうことだ。

 俺がスセリに代わって説明すると、当たり前だがみんな驚いた。


「僕たちで魔王ロッシュローブを倒すのかい?」

「よかったのう。倒すことができれば英雄になれるのじゃ」

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