97-3
少女を冒険者ギルドへと連れてきた。
「古代遺跡で眠っていた少女……」
ブレイクさんも驚いていた。
古代遺跡で眠っていた少女。
名を『イルル』という。
イルルは『たまご』を守護するために作られた機械人形だと自ら言った。
どこからどう見てもイルルは人間の少女だ。
これまで戦ってきた、いかにも機械めいた機械人形とは明らかに違っていた。
「私はたまごを守護するために作られました。たまごを譲渡してください」
「……確かに、古代遺跡で発見したたまごは僕らギルドが持っている」
ブレイクさんが質問する。
「イルル。あのたまごはなんのたまごなんだい?」
「たまごの詳細な情報は上位の権限を持つ者にしか教えられません」
「上位の権限を持つ者……?」
「古代人の偉い人間じゃな」
首をかしげるブレイクさんにスセリが教えた。
「それではたまごは渡せない。危険な魔物のたまごだったとしたら破壊する必要があるからね」
「ただちにたまごを譲渡してください。私には譲渡を妨害する者を排除する許可が与えられています」
「なっ!?」
穏やかではない雰囲気になってきた。
俺は二人の間に割り込む。
「ちょっ、ちょっと待ってくれイルル。落ち着いて話し合おう。俺たちは敵じゃないんだ」
「……了解しました」
とりあえず安心する。
ブレイクさんも胸をなでおろしていた。
「イルル。俺たちにたまごのことを教えてくれないか」
やむを得ず俺はちょっとしたズルをする。
「俺はキミのいた部屋のカギを開けた人間だ」
「生体認証をクリアしたのですね」
「ああ。だからイルルの言う上位の権限を持つ人間だと思うんだが」
「……」
イルルは考え込む。
しばらくしたあと、首を縦に振った。
「わかりました。あなたがたの情報によると人類は一度滅び、新たな人類が文明を築いているとのこと。想定外の事態のため、あなたを上位の権限を持つ人間として認証します」
「理解してくれて助かる」
「で、あのたまごはなんなんですの?」
「あのたまごは――」
イルルの次の言葉は再び俺たちを驚かせた。
「あのたまごは、魔王ロッシュローブのたまごです」
魔王……ロッシュローブ……!?
「うそでしょう!?」
「ま、魔王ロッシュローブはおとぎばなしの存在じゃ……」
「いえ、ブレイクさん。魔王は実在したのです」
俺たちは魔王ロッシュローブが実在した事実をブレイクさんに説明した。
「魔王がたまごを産んでいたというのか……」
「魔王ロッシュローブは己の分身となるたまごを産んで残しました。我々はそれを価値あるものと判断し、研究対象としました」
世界を滅ぼしかけた魔王は完全に死んではいなかった。
復活するための分身を残していた。




