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96-7

「ふむ、あの少女にそういう事情があったとは」


 ブレイクさんが表情を曇らせる。

 そして首を横に振る。


「いや、なにかしら特殊な事情があるのはわかりきっていたんだ。竜といっしょにいるなんて。それでも僕たち大人は見て見ぬふりをしてしまっていた」


 それからこう続ける。


「ミリアちゃんと話がしたいな」

「ミリアを助けてくれるんですか?」

「それは本人次第かな。助ける、っていうのは本人の受け取りかたが重要だからね」


 確かにそのとおり。

 本人の事情を考えずに助けるのは単なるおせっかいだ。


「まずはミリアちゃんに会いにいこう」


 そういうわけで、俺たちとブレイクさんはミリアに会いにいった。

 彼女はいつものようにエルドリオンと跳ね橋を占拠して通行料を徴収していた。

 俺たちに気付くとミリアは通行料を入れていた箱をその場に置き、笑顔で走ってきた。


「アッシュさん、こんにちはーっ」


 両手を挙げてあいさつしてくる。

 元気なあいさつだ。

 ミリアが俺の肩越しを覗いて首をかしげる。


「後ろの人は誰?」

「僕の名前はブレイク。よろしくね、ミリアちゃん」

「ミリアです。こちらこそよろしくお願いします、ブレイクさんっ」


 しっかりあいさつができる。

 やっぱりいい子だな、ミリアは。


「我が名はエルドリオン。誇り高き竜なり」

「竜とあいさつできるなんて光栄だよ」


 ブレイクさんがミリアににこりと笑う。


「僕はこのヴォルクヒルの冒険者ギルドの責任者なんだ」

「せきにんしゃ……?」


 ミリアは言葉の意味がよくわからないようす。


「いちばん偉い人だよ。一応ね」


 ブレイクさんはかんたんな言葉に言い換えた。

 するとミリアはぎょっと目を見開く。

 そして慌ててエルドリオンの前に立ちはだかって両手を広げた。


「エルドリオンはやさしくていい竜なの!」

「え……?」

「だからやっつけたらだめ!」


 ミリアはどうやら勘違いしてしまったらしい。

 俺たちがエルドリオンを討伐しにきたと思ってしまったのか。


「安心して。キミの友達は傷つけないよ。僕はミリアちゃんとお話がしたくて来たんだ」

「わたしとお話……?」

「うん。大事なお話なんだ」

「それってこわいお話?」

「いいや。違うよ。もしかしたら、うれしい話かもしれない」


 屈んでミリアと目線を合わせ、ブレイクさんはやさしい口調で言った。

 それから俺たちのほうを振り返る。


「そういうわけだから、僕とミリアちゃん、それとエルドリオンの三人でお話をしたいんだ」

「わかりました。俺たちは帰りますね」


 俺たちはその場を後にした。

 ブレイクさんならきっとミリアの抱えている事情を解決してくれるだろう。

 そう信じて。

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