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ミリアは本当にいい子だな。
純真であどけなくて。
「俺でよかったらお兄ちゃんにならせてくれ」
「うーん、やっぱりいいや」
ちょっと傷つく。
「わたしにはエルドリオンがいるからねっ」
「エルドリオンとは仲良しなんだな」
「うんっ。わたしの一番のお友達っ」
ミリアが露店に目を向ける。
「これ食べてたの?」
「ああ。買ってあげようか?」
「やったーっ」
そこにスセリが割り込んでくる。
「あー、やめとくのじゃ。この肉、固くてまずいのじゃ」
店主がぎろりとにらんでくる。
スセリはまったく意に介していない。
このまま立ち去るのも気まずいので、ミリアに串焼きを買ってあげた。
「はいよ。まずい肉」
店主に嫌味を言われた。
どうして俺が……。
「あ、もう一本買ってもらっていい?」
「エルドリオンの分だな」
もう一本、追加で串焼きを買う。
店主の機嫌が少しだけよくなったように見えた。
「ありがとー、アッシュさーん。じゃーねー」
ミリアは手を振りながら走り去っていった。
あんないい子なのに両親に捨てられるなんて不憫だ。
普段はどこで暮らしているのだろう。
ちゃんと屋根のある場所で寝ているのだろうか、心配になる。
「アッシュよ。それ以上はおせっかいというものじゃ」
「おせっかいって悪いことなのか?」
「悪いというか、余計なお世話なのじゃ」
かもしれない。
むやみに他人の事情に首を突っ込もうとするのは、うぬぼれからくるものだろう。
最近、いろいろと活躍しているから。
「あやつには守護者となる竜がおる。安心するのじゃ」
「……そうだな」
翌日、再び遺跡の探索に出かけた。
旧人類の科学によってつくられた建築物。
それは地下にも広がっている。
現代の俺たちの文明ではとても作れないような遺物がいくつもあり、多くはガラクタだが、中には高値で取引されるものもある。
そういうものをさがすのが冒険者の仕事のひとつだ。
光の玉を魔法で呼び出し、光源にする。
周囲を照らしながら通路を歩いていく。
最後尾ではプリシラが地図を描いている。
「この先に魔物の巣があります」
足音を立てないよう、ゆっくりと進み、曲がり角から頭だけを出してようすを確認する。
少し広い通路に魔物が2体いた。
爬虫類の頭部に四本脚が生えた奇妙な魔物だ。
「わたくしに任せてくださいまし」
マリアが魔法で光の剣を作る。
「俺が先手を打つ。そのあとに頼む」
「承知しましたわ」
俺は曲がり角から飛び出したのと同時に魔法を放った。
「光の矢よ!」
かざしてから光の矢が射出される。
矢は爬虫類型の魔物に命中して爆発した。
一体撃破。
「てやーっ」
生き残ったもう一体の魔物が襲いかかってくるのをマリアが迎えうった。
光の剣で魔物を叩き斬る。
二体目も倒した。




