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95-3

「あー、アッシュさん!」


 急に名前を呼ばれた。

 振り返ると、そこには小さな女の子がいた。

 竜と共に商売をする少女、ミリアだった。


 ミリアが近寄ってくる。

 それと同時に、スセリがようやく噛みきれた肉を飲み込んだ。


「おぬしはミリアか」

「二人でデートしてるの?」

「うむ」

「仲良しなんだねー」


 否定するも面倒だったので特になにも言わなかった。


「アッシュさんたちって旅行にきたの?」

「いや、仕事だ。俺たちは冒険者で、遺跡の探索をしているんだ」

「冒険者! かっこいいー」


 ミリアが目をきらきら輝かせる。

 それからすぐはっとなる。


「魔物をやっつけたりしてるの?」

「してるな」

「エルドリオンをやっつけるように、領主さまに言われたりした……?」

「いや、それはないから安心してくれ」

「よかったー」


 というか、逆だ。

 エルドリオンとミリアのことは見過ごしていいと言われていた。


「わたしたちー、いっぱいお金を貯めなくちゃいけないんだー」

「理由を聞かせてくれないか?」

「それはひみつ」


 ウィンクするミリア。


「なら代わりにこの質問に答えてくれ。悪事を働いているわけじゃないよな?」

「安心して。悪いことはしてないよ」


 とりあえず一安心か。

 もっとも、勝手に通行料を徴収しているのも悪事に含まれるのだが。


「ミリアよ。おぬし、どういういきさつでエルドリオンと組むことになったのじゃ?」

「エルドリオンは、お父さんとお母さんに捨てられたわたしを拾ってくれたんだよ」


 驚くべきことにミリアはヴォルクヒルの貴族の娘だった。

 しかし、彼女は半年前、とある理由で両親に捨てられたのだった。

 その『とある理由』は、彼女の手の甲にある『あざ』のせいだった。


「このあざがね、家に悪いことが起きるしるしだって言われたの」


 ミリアが手の甲を見せてくる。

 彼女の小さな手の甲には、なにかの紋様に見えるあざがあった。

 見方によってはなにか意味のあるしるしに見えるが……。


「スセリ。このあざは本当に悪いことが起きるしるしなのか?」

「魔力も特別な力も感じんのじゃ。ただの迷信じゃな」

「でも、お父さんもお母さんもわたしのこと嫌いだったから……」


 こんな小さな少女が理不尽な目にあうなんて。

 俺は憤りを抑えずにはいられなかった。

 その表情でさとられてしまったらしく、ミリアは苦笑して首を横に振った。


「あのね、今の生活のほうが、エルドリオンといっしょに暮しているほうが楽しいの」

「でも……」

「アッシュさんてやさしいんだね。わたしのお兄ちゃんになってもらいたいな」

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