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「キミたちには遺跡の地図描きをがんばってもらわないとね」
「がっ、がんばりますっ」
ぐっと手を握って気合いを入れてみせるプリシラ。
驚くブレイクさん。
「えっ、キミが描くのかい……?」
「いっしょうけんめいがんばりますっ」
「てっきりアッシュくんのメイドさんかと思っていたよ」
「合っていますよ。わたしはアッシュさまのメイドです」
「プリシラは冒険者でもあるんです。地図描きなら王都一ですよ」
「へー」
ブレイクさんが感心する。
プリシラは「てへへ」と頬をかいて照れていた。
「じゃあ、よろしく頼むね、プリシラちゃん。キミが今回の主役だよ」
「メイドの威信にかけて務めを果たします」
ブレイクさんから地図を受け取る。
地図を開くと、俺たちは驚いた。
遺跡の地下部分の地図だが、かなり汚い。
複数の人間が探索を進めた分だけ各々勝手に書き足して作ったものらしく、つぎはぎだらけのわかりづらい地図になっていた。
ブレイクさんによると、地図の誤りはかなりあるらしい。
これは一から描きなおしたほうが早いだろう。
「遺跡には機械人形や魔物も徘徊している。危険かもしれないけど頼むよ」
「安心してください。プリシラは戦いも得意なんです」
「戦いもできるのかい!?」
ブレイクさんはさらに驚いたのだった。
驚くのも当たり前だ。
こんな小さな女の子が機械人形や魔物と渡り合えるなど、誰が思うというのか。
そして翌日、さっそく俺たちは地図描きを始めた。
古い地図を見ながら遺跡の地下を探索し、プリシラが新しい地図を描いていく。
あらかた描き終えたらギルドに戻って清書をする予定だ。
「えーっと、ここのつきあたりを右じゃな」
「……行き止まりですわよ」
遺跡の調査は思いのほか苦労していた。
ブレイクさんから渡された地図は案の定、かなり間違いが多かったのだ。
おまけにメモ書きだらけでわかりづらい。
「ここは行き止まり、と」
プリシラが地図を描く。
「こっちを行ってみるか」
「そっちには機械人形が徘徊しておる。気をつけるのじゃぞ」
通路を曲がると、開けた空間に出た。
今度は地図の情報は正しく、小さな車輪で走行する機械人形が三体、徘徊していた。
「ここには機械人形、と」
そうやって、階下へと続く大事なルートを重点的に調査し、地図を描いていった。
初日は地下1階の地図描きで終わった。
ギルドに戻って報告したあと、ギルドが手配してくれた宿屋に帰る。
「プリシラ。地図の清書は明日にするんだぞ。今日はゆっくり休んでくれ」
「承知しました、アッシュさま」
そして翌日、プリシラは地図を清書した。
あまり役に立たなかったが俺たちも手伝った。




