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10-2

 浜辺には俺だけが先に来た。

 プリシラ、スセリ、ディアは後から来ることになっている。

 なぜかというと――。


「おまたせいたしました。アッシュさまっ」


 振り返ると三人がいた。

 三人とも水着に着替えていた。

 そう。彼女たちは水着を借りに浜辺の店に行っていたのだ。


「わたしの水着、似合ってますか? アッシュさま」

「ああ。かわいいよ。プリシラ」

「てへへ」


 プリシラはワンピース型の水着。

 色は薄い桃色。

 胸元と腰にフリルがついているのがかわいい。

 プリシラによく似合っている。

 彼女がくるりと一回転してみせると、フリルがふわりと舞った。


「こ、これは少々、肌の露出が多い気がするのですが……」


 ディアは上半身と下半身に分かれている白の水着。

 本人の言うとおり、肌の露出が多く、水着は最低限の部分しか隠していない。彼女の豊かな胸は上半分が完全にさらけ出されていて、谷間が強調されていた。

 真面目な少女が大胆な水着を着ている。

 なにより、その事実が彼女の魅力を大きく引き立てていた。


「ディアも似合ってるぞ」

「は、はい……」


 顔を赤らめてディアは視線をそらした。

 彼女は落ち着かないようすで髪をいじっていた。


「ワシはどうじゃ」

「いいんじゃないか」

「なんじゃ、そのいい加減な感想は」


 スセリは白い線の入った紺色の水着だった。

 プリシラと同じく、肌の露出は控えめ。

 ――かと思いきや、背中は尻のあたりギリギリまでぱっくりと開いて見せていた。


 水着を着ている三人とも、布地が肌にぴったりと張り付いているため、身体の線がはっきり出ている。

 スセリはまったく気にしていないし、プリシラはかわいい水着を着られてはしゃいでいる。

 ディアはそんな格好を衆目にさらしているのがたまらなく恥ずかしいらしく、水着のズレを何度も直している。だが、彼女の意思に反し、そのしぐさは余計に彼女を煽情的に魅せていた。


「さっそく海に入るのじゃー」

「はいっ」

「は、はいっ」


 スセリを先頭に、女子三人は波打ち際へと走っていった。


「てやっ、てやっ」

「あははっ。スセリさま、つめたいですーっ。反撃しますよーっ」

「あ、あのっ、そんなに勢いよく水をかけられたら水着がはだけてしまいます……」


 三人は水をかけあって遊んでいる。

 楽しそうでなによりだ。

 俺も彼女たちの近くまで寄って、打ち寄せる波を触って遊ぶ。

 冷たくて気持ちいい。


「くらうのじゃっ」

「うわっ」


 スセリが水をかけてくる。


「やめろって。俺は普通の服なんだから」

「こんなものではないぞ。我が奥義を受けるのじゃ!」


 スセリが手を太陽に掲げる。

 すると、穏やかだった海が急に激しく荒れだし、大きな波が生じて俺たち四人を呑み込んだ。

 完全に水びたしになってしまった。

 口の中がしょっぱい。


「うわー、おっきな波でしたねー」

「そうですね」

「どうじゃ、面白かったろう」

「面白かったですっ」

「俺はぜんぜん面白くなかったがな……」


 ……ん!?

 何気なく三人を見たとき、俺は目を疑った。

 ディアの水着の上半分がなくなっている!?

 波に流されてしまったのか、水着の上半分がなくなったディアは上半身裸の状態になっていた。

 しかも、本人は気付いていない。

 平然とした顔で胸をさらけ出している。


「ディ、ディア……」

「どうしました? アッシュさん」

「む、胸が……その……」

「胸、ですか?」


 ぽかん、と首をかしげるディア。

 俺は震える指先で彼女の胸元を指さす。

 彼女の視線が自分の胸へと落ちる。

 その瞬間、彼女は時が止まったかのように硬直した。


「ああっ! ディアさまの水着が!」

「ほほう」


 目をまんまるに見開くプリシラ。

 ニヤリと笑うスセリ。

 石像のごとく硬直したディア。

 次の瞬間、


「きゃああああああああああっ!」


 浜辺に彼女の悲鳴が響き渡ったのであった。

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