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94-6

「つまり、不法占拠と」

「ついでに違法な商売もやっておるのじゃな」


 少女と竜は毎日ここで通行料を勝手に徴収しているのだという。

 兵士の前で、堂々と。悪びれもなく。


「でも、どうしていきなりそんなことを?」

「わからない。ただ、通行料を支払っている限りは危険はない」


 門番たちの前から離れた俺たちは少女と竜のところへ行った。

 少女がとてとてと箱をもって近づいてくる。


「ここから先へ進むには通行料が必要ですっ。支払わなければエルドリオンの炎で消し炭にしちゃいまーすっ」

「あの竜、エルドリオンって名前なのか」

「はいっ。あ、わたしはミリアっていいます」

「俺はアッシュ。よろしく、ミリア」

「えへへー」


 ミリアという名前らしい。

 すなおでいい子そうだ。

 俺はプリシラとマリア、スセリを順番にミリアに紹介した。


「王都から来たんだねっ。へー。王さまにも会ったー?」

「ああ。何度か会った。王女さまにもな」

「すごいっ。王女さま、きれい――」

「ミリア。人間を信用してはならぬ」


 俺たちの会話をさえぎってエルドリオンが言った。

 ミリアがけろっとした顔で返事をする。


「だいじょうぶだよ、エルドリオン。この人たち、いい人そうだもん」

「人間の本質は邪悪。心を許しては利用されるだけ」


 ひどい言われようだ。

 すなおなミリアとは正反対に、エルドリオンは人間をろこつに警戒している。


「人間たちよ。通行料を払ってさっさと立ち去るのだ」

「いえ、わたくしたちはここを通るために来たのではありませんことよ」

「なに」


 マリアがびしっと指をさす。


「エルドリオン。ここで勝手に通行料を取るのは違法でしてよ。今すぐやめなさい」

「人間が勝手に作った法に従う義理はない」


 人間の領地に踏み入っているのなら法に従うべきだと思うが……。


「人間のミリアに法を犯させてもよいと思ってますの?」

「それは……」


 言いよどむエルドリオン。

 二人の間に慌ててミリアが割って入る。


「けんかしないで! マリアさん、エルドリオンはいい竜なの」

「でも、ミリア……」

「わたしたち、どうしてもお金が必要なの」

「どうしてなのじゃ?」

「……」


 ミリアは沈黙する。

 エルドリオンも黙っている。


 ここからさらに問いただして無理やり聞きだすべきか。

 判断に悩んでいると、門番の一人が俺たちの前にやってきた。


「そのへんにしておいてあげな」

「いいんですか? この子たちを居座らせて」

「実を言うと、この子たちがここにいるのを領主さまは黙認してるんだ」

「えっ」

「詳しい話は冒険者ギルドで聞かされると思うよ。行って尋ねてみるといい」

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