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94-5

 外観に反して中身は思ったほど目新しいものはなかった。

 大陸でもっとも繁栄している王都を拠点にしていたのだから、それはしかたないか。


「キミたち、観光客かい?」


 立ち止まって街並みを眺めていると怪しげな男に声をかけられた。

 無視すべきか……。


「いや、冒険者なのじゃ」


 スセリが答えた。


「そうかい。冒険者ギルドまでの道案内をしてあげようか? 安くしとくぜ」

「遠慮するのじゃ」


 ああ、なるほど、そういう男か。

 こうやって外から来た人間に道案内して金を稼いでいるらしい。

 王都にもこういう生業の人間は少なからずいる。


「それなら、ヴォルクヒルの名物を案内してやろうか?」

「それならあの跳ね橋じゃろ?」

「まあ、それもあるんだが、最近もうひとつ、名物が出来てね」

「ほう」


 スセリが興味を示す。

 プリシラとマリアも気になるようだ。


 男は続きを話そうとしない。

 スセリがいくらかの安い金を渡すと、男は「まいど」と言ってこう続けた。


「あんたらの通ってきたのは駅に近い南門。ここから反対側に北門がある。そこに行ってみな」

「なにがあるのじゃ?」

「それは行ってみてからのお楽しみだ。払った金の分は楽しめると思うぜ」


 もらうものをもらった男は去っていった。


「北門か。行ってみるか?」

「せっかくですし行ってみませんこと?」

「賛成ですっ」

「はした金とはいえ、払うものは払ったのじゃからな」


 そうして俺たちは冒険者ギルドへ行く前に北門へと行ってみた。

 ……すると、そこには驚くべきものがいた。


「たしかに先ほどの情報はお値打ち価格でしたわね……」

「のじゃ」

「しかし、どうしてこんなところに……」


 北門にも同様、堀を渡すように跳ね橋がかかっていた。

 ……だが、跳ね橋のど真ん中にあるものが居座っていた。


「ここを通りたくば料金を払うのだ」


 ……竜だ。

 竜が跳ね橋に居座っていて通せんぼしていたのだ。


「通行料はこちらにどうぞー」


 そして竜のそばには一人の少女がいた。

 箱を手に持っている。


「通行料を払わなければ消し炭になりますよー」


 そう明るい声で脅している。

 通行人たちはしぶしぶ少女が持つ箱の中に通行料を入れていった。

 跳ね橋の真ん中に居座る竜におびえながら、その脇を通っていく。


 竜は吠えるわけでも炎を吐くわけでもなく、通行人たちを目で追うだけだった。

 通行料さえ支払えば危害は加えないらしい。

 少女がニコニコしながら箱の中を竜に見せる。


「エルドリオン、今日はこんなに儲かったよ」

「うむ。よいことだ」


 少女は竜をエルドリオンと呼んだ。


「あの、門番さん。北門では通行料が必要なんですか?」


 プリシラが門番に質問する。

 門番たちは呆れた面持ちで首を横に振った。


「あの竜と子供、ひと月前くらいからいきなりここにやってきたんだ」

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