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94-1

 遺跡探索の依頼を受け、俺たちは大陸の東にあるヴォルクヒル領へと向かっていた。

 列車に乗って東へ。


「キルステンには感謝しないといかんのう」

「一等車両に乗れるなんて、さすがギルド長さまですわね」


 俺とプリシラとスセリ、マリアの四人は一等車両に乗っていた。

 優雅な旅路だ。

 ただ、俺たち以外の乗客はみんな身なりの整った金持ちばかりだから、冒険者である俺たちはやたらと悪目立ちしていた。


「アッシュさま、ヴォルクヒル領とはどのようなところなんですか?」

「俺も行ったことはないから詳しくは知らないが、大きな橋が名所らしい」


 ヴォルクヒル領は戦乱の時代、戦いを左右する要衝だったので、強固な防壁で周囲を囲っているという。さらに周囲には堀があるとのこと。

 堀を渡るために橋がかかっている。

 領内に入るにはその橋を渡る必要があるのだ。


「遺跡調査がはじまったらよろしく頼むな、プリシラ」

「き、緊張します……」

「いつもどおりやればいいさ」


 ヴォルクヒル領からの依頼は遺跡の地図作成。

 ヴォルクヒル領近郊には大規模な遺跡があるのだが、作成された地図はだいぶ古いものだった。

 調査のたびに違う人たちが書き足していったせいで、あいまいな部分や間違った箇所が結構あるらしい。


 なので、俺たちにもっと正確でわかりやすい地図を描いてもらいたいのだと依頼してきたのだ。

 地図を描くのはプリシラの役目。

 緊張するのも無理はないか。


「ヴォルクヒル領に着いたらおいしいものを食べましょう、プリシラ」


 マリアがプリシラの肩にやさしく手を置く。

 緊張した面持ちだったプリシラが肩の力を抜き、笑みを浮かべた。


「そうじゃ。退屈じゃろうしカードゲームでもせぬか?」


 スセリが提案する。

 彼女の手にはカードの束。


「いいですわね。なにをしますの?」

「オールドメイドじゃ」


 オールドメイド。

 ルールは簡単。

 となりの人の手札からカードを一枚抜いていき、同じカードがそろったら捨てる。そうして手札を全て失くしたら勝利だ。


 つまり、オールドメイドに経験や実力は必要ない。

 すべて運だ。

 だからどんな人とも楽しめるのだ。


「カードを配りますね」


 プリシラが全員にカードを配っていく。

 さて、俺の手札は……。お、最初から結構そろってるな。

 そろっているカードを捨てると、手札は10枚から6枚に減った。


「プリシラ。おぬし、ちゃんとカードを切ったか? ワシは一枚もそろっておらんぞ」

「ちゃんと切りましたよ」

「ぐぬぬ」


 これも運だ。


「ひえっ」


 自分の手札を見たプリシラが驚きの声を上げる。

 あ、プリシラが『死神』を引いたんだな。


 オールドメイドのルールには死神の絵柄のカードが含まれている。

 死神の枚数は1枚だけなので、そろえて捨てることができない。

 つまり、最後まで死神を持っていた者が必然的に敗北するのだ。

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