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「なーんか、前にも同じような展開あった気がするのじゃ」
「あったな」
「アッシュ。おぬしはどう思っておる」
スセリがスカートの端を持ち上げる。
それから上目づかいで訪ねてくる。
「似合っておるか?」
「もちろん、似合ってるさ」
「『かわいい子供』か『麗しい淑女』か。どちらじゃ」
「かわ――」
と言いかけたところで止めた。
スセリがジト目でにらんできている。
自分からその年齢の姿になったのに……。
「おや、諸君らはあのときの!」
そのとき、聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには醜い外見の中年の男性、ガルアーノがいた。
今回は護衛ではなく美しい女性をはべらせている。
マリアとスセリが真剣な表情になる。
マリアにいたってはあからさまな敵意を見せている。
ちょっと心配だ。
「諸君らもパーティーに招待されていたとはね」
「……ガルアーノさんこそ」
「うむ。国王陛下には感謝せねばならんな。庶民であるワガハイごときを王城に招いてくださったのだからな」
セリフとは裏腹に態度はまったく謙遜していない。
「諸君らはどういった縁があってここに?」
「わたくしはルミエール家の代表として、こちらの彼と彼女はランフォード家の代表としてですわ」
「む、貴族のご子息ご令嬢だったのか」
ガルアーノが眉間にしわを寄せる。
見下していた相手が貴族だと知って不愉快になったのだろう。
「まあ、諸君らがパーティーを楽しめるのは父親と母親のおかげだというのを忘れないようにな。諸君らはなにもえらくないのだから」
「承知していますわ」
本当に嫌なやつだな。ガルアーノは。
とはいえ、嫌なやつでよかった。
遠慮なくこらしめることができるのだから。
「スセリ。ここで正体を暴けるか?」
スセリに耳打ちする。
スセリは俺に目を向けないままうなずいた。
俺はホールの隅に立つ衛兵に目配せする。
衛兵が姿を消すと、代わりに執事が出てきて俺たちのところにやってきた。
「ガルアーノさまでございますね?」
「うむ。いかにも。ワガハイがガルアーノだ」
「国王陛下から特別に贈り物があるとのことです」
「なんと!」
さすがにガルアーノもこれには驚いた。
ガルアーノは執事に連れられてホールの中央に行った。
俺たちもこっそりと続く。
ホールの中央には国王陛下がいた。
俺たちに対する態度とは正反対の、腰の低い態度に変わるガルアーノ。
「これはこれは国王陛下。ごきげんうるわしゅう」
「ああ。まあ、気楽にしろ、ガルアーノ」
執事たちがさりげなく客たちを誘導し、ガルアーノと国王陛下の周囲から遠ざける。




