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そしてパーティー当日。
俺とマリアとスセリはお城で開催される社交パーティーに出席した。
名門ランフォード家初代当主とその子孫、そして同じく名門のルミエール家の娘、ということで開催日が目前であってもよろこんで招待してくれたとキルステンさんは言っていた。
残念ながらプリシラとエリンシアは留守番だ。
パーティー会場は王城のダンスホールで行われた。
広いホールには大勢の人々が食事をとりながら歓談している。
ホールの奥では楽団が上品な曲を演奏している。
出席者はみんな、身なりの良い服装を着ている。
庶民も出席している、というがほとんどが裕福層の人間だろう。
「よし、さっそく」
「酒を飲むのじゃな」
「いやいや、違うだろ……」
「まじめにやってくださいまし、スセリさま」
ぷんすか怒っているマリア。
マリアはドレスを着ている。
大人びたふんいきの、むらさき色のドレスだ。
豊満な胸が強調されていて、とても色気を感じる。
スセリはピンクのドレスだ。
ただ、肉体は子供なので感想は『かわいい』が適切だろう。
二人とも、動きづらい衣装を着ている。
もし、ガルアーノと戦いになるとしたら俺ががんばらないと。
「食事やおしゃべりを楽しまねば、ガルアーノに怪しまれるのじゃ」
「そんなくらいでは怪しまれませんわ」
「とにかく、おいしいものをワシは食べたいのじゃよ」
本音がもれた。
スセリは食事が並べられたテーブルのほうへ行き、マリネやらローストビーフやらを小皿に取りだした。
しかたく、俺とマリアも食事に手をつけた。
おいしい。
さすが王城のシェフが作る料理だけあって一流の味だ。
「キミはもしかして、アッシュ・ランフォードくんかい?」
見知らぬ紳士に声をかけられる。
「あ、はい。はじめまして」
「はじめまして。キミたちの活躍は聞いているよ。ランフォード家の子息が冒険者になって困っている人々を助けているって。すばらしいよ」
「ありがとうございます。今後ともがんばります」
「そちらのお嬢さまはフィアンセかい?」
「ええ。そうですの」
堂々とマリアは肯定した。
否定するとややこしいことになりそうなので俺は黙っていた。
パーティーで男性が連れてくる女性なら、普通は婚約者だよな。
「そちらの小さいお嬢さんは」
「ワシも婚約者なのじゃ」
「えっ」
ややこしいことになってしまった。
「そうかい。いいお嫁さんになれるといいね、お嬢ちゃん」
「……のじゃ」
紳士にろこつに子供あつかいされたスセリは不満げだった。
それから少し雑談したあと、紳士は去っていった。




