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92-4

「あきらめるにはまだ早いのじゃ」


 スセリが言う。

 落ち込んでいたエリンシアがはっと顔を上げる。


「ありふれたパン屋だったら『ありふれていないパン屋』になればよいまでなのじゃ。じゃろう? アッシュよ」

「ああ」


 スセリの言うとおりだ。

 ありふれているとはいえ、せっかくおいしいパンを焼けるのに閉店するのはもったいない。


 エリンシアのパンには可能性がある。

 他のパン屋にはない独自性さえあればきっと人気になるはずだ。


「エリンシア。あきらめないで、わたくしたちを頼ってくださる?」

「もっ、もちろんです!」


 エリンシアはぺこりとおじぎする。


「よろしくお願いします! どうか私のパン屋を救ってください!」

「わたしたちでこの『ブランシェ』を大繁盛させちゃいましょうっ」


 こうして俺たちはエリンシアのパン屋『ブランシェ』を助けることになった。


 なにはともあれ、まずは外観。

 人は見た目がすべてではない、と言われているが、お店に関しては見た目が一番大事だと思う。

 この『ブランシェ』は、昔こそおしゃれな見た目だったのだろうが、月日が経ったせいで色あせ、劣化し、今はその面影をかろうじて残す程度。印象はよくない。


 塗料を買ってくる。

 それから汚れても平気な服装に着替え、色の塗りなおしにとりかかった。


「できましたーっ」


 丸一日かけて店舗の塗装を終えた。

 年老いたように色あせていた外観は、今はピンクや水色といったパステルカラーに彩られたかわいらしい姿に若返っていた。


「かわいらしい色使いですねっ」

「体中が塗料くさいのじゃ。早く風呂に入りたいわい」

「見違えるほどきれいになりました! これで繁盛間違いなしです!」

「気が早いな、エリンシア」


 次にやるべきことは――。


「新商品の考案かな」

「新商品ですか……」


 この『ブランシェ』独自の、他のパン屋にはない、目玉になるものを考えたい。

 とはいえ、俺たちはただの冒険者。パンに関しては素人。

 新しいパンを考えろと言われても難しい。


 みんな考え込む。

 訪れる沈黙。


「うーん、いっそ焼きそばとカレーライスでも売り出すのはどうじゃ?」

「あはは、海の家ですね……」

「もう、スセリさまってば。ここはパン屋ですのよ」

「冗談じゃよ」


 そのとき俺はひらめいた。

 スセリの案、意外といけるかもしれない。


「焼きそばとカレーをパンに入れるっていうのはどうだ?」

「えーっ!」


 プリシラとマリアとスセリとエリンシアが同時に声を上げた。


「アッシュ、正気ですの?」

「なんとなくだが、いける気がするんだ」

「試してみる価値はありそうじゃぞ」

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