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「まさかこやつ、神だったとはのう」
スセリがリビングのソファーに寝転びながら端末でゲームをしている。
彼女が熱中しているゲームにはランキングというものがあり、ゲームで活躍した順位がスコアというものでわかるようになっている。
大地の神はそのランキングで不動の一位を記録し続けているのだ。
「神がうらやましいのじゃ。ワシも働かなくてよいのなら一日中ゲームしておるのに」
「そんなに面白いのか?」
俺もスセリに経験値稼ぎをさせられることがあるが、今のところこのゲームとのやらのどこがおもしろいのかわからない。
「正直に言うと、このゲームはつまらんのじゃ」
「つまらないのに熱中してるなんておかしいだろ」
「それがまかり通る。決して矛盾してはらぬのじゃ」
ゲームには今言ったようなランキングの機能やら、対戦機能、自分が育てたキャラクターや手に入れたレアアイテムの公開機能があるという。
そういった見栄を張ったり競わせたりする要素がいくつもあり、ゲームで遊ぶ者を熱中させる仕組みになっているのだとスセリは言った。
「しかも、昔は課金してくじを引かせる『ガチャ』があったからのう」
「旧人類も恐ろしい遊びを考えるもんだな」
旧人類の社会問題になっただけはある。
「おっ、ひらめいたのじゃ」
スセリがポンと手を合わせる。
間違いなくろくでもないひらめきだ。
「ワシが昼に寝て夜に起きる生活にすれば、昼間はアッシュが、夜はワシがゲームが交代できるのじゃ。これなら絶え間なくゲームをプレイできてランキング一位になれるかも――」
「規則正しい生活をしろ。でないと端末で遊ばせないからな」
キッチンからプリシラがやってくる。
「おやつができましたよ」
リビングに全員が集まった。
俺とプリシラとスセリ、マリア。
今日のおやつはプリシラ特製のプリンだ。
台形の黄色い本体の頂上に茶色いカラメルがかかっている。
生クリームとチェリーも添えられていて、見た目もばっちり。
スプーンですくって口に入れる。
卵黄の濃い味わい。
ほろにがいカラメルが混ざり合って、ただ単に甘いだけではないところがおいしさを一段階引き上げている。
「朝昼夜の三食ぜんぶプリンでもかまわんくらいのおいしさなのじゃ」
「てへへ。ありがとうございます」
「やはりプリシラはわたくしの恋のライバルにふさわしい相手ですわ」
「ま、負けませんからねっ」
それから一か月、海の家は閉店するまで連日大盛況だった。
忙しかったが楽しくもあり、俺たちの夏の思い出になったのだった。




