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91-6

 よろこぶにはまだ早い。

 問題はここからだ。

 ゴルドカリバーはこの魔物が低確率でドロップすると大地の神は言っていた。


 ドロップとは確か『落とす』って意味だったっけな。

 つまり、激戦の末になにも手に入らない可能性もあるのだ。

 むしろ、そうなる確率のほうが高い。


 俺たちはドキドキしながら画面を凝視する。

 長い時間そうしていたように感じたが、実際はまばたきを数回する程度の時間しか経っていなかった。

 ボスがいた位置に、おもむろに宝箱が出現した。


 宝箱を開ける。

 中には金色に輝く剣が入っていた。


「こ、これは……!」

「剣ですわ!」

「ゴルドカリバーですっ」

「えっ!?」


 驚いた大地の神も端末をのぞき込んできた。


「すごい。そのレベルで本当に手に入れるなんて……」

「ふー。やれやれなのじゃ」


 緊張が解けたスセリがほっと息をついた。

 それからスセリは交換機能を使って大地の神にゴルドカリバーを譲渡した。


「約束どおり、うるう年の一日を担当するのじゃぞ」

「仕方ないわね。わかったわ。雨の神と風の神に話してくる」


 大地の神の姿が大気に溶けるようにして消えた。


「さて、ワシらも地上に戻るかの」

「スセリ」

「ん? なんじゃ、アッシュ」

「本当にありがとう。大事なキャラクターを犠牲にしてまで」


 真正面からお礼を言われたスセリは目をまんまるにした。

 照れくさげに目をそらす。


「デ、デスペナでロストした分の経験値はまたおぬしに稼いでもらうのじゃ」

「ははっ。わかったよ」

「将来の夫の頼みじゃからな。ワシも断れんのじゃ」


 地上に出ると、外はウソみたいに晴れていた。

 大地の神が雨の神と風の神を説得したのだ。

 そういうわけで、王都は久々の快晴になったのだった。


 真夏の日差しで、浜辺ははだしで歩くとやけどしそうなくらい熱い。

 大勢の人たちがそんな浜辺で海水浴を楽しんでいる。

 俺とプリシラとスセリ、マリアの四人はせっせと海の家で働いている。


 ひたすらやきそばとカレーを客にふるまう。

 水着姿のマリアの美貌につられてか、隣の『ブーゲンビリア』に負けないくらい盛況だ。

 中には彼女に言い寄る男性もいたが、マリアはそんな男たちを軽くあしらっていた。


 食材を使い果たした後は俺たちも海で遊んだ。

 全員水着に着替え、海で泳いだ。

 夕日が世界を茜色に染める時刻まで遊んだせいで、海から上がった俺たちはすっかり疲れ果てていた。


 後日、ギルド長の執務室にて。


「よくやった、アッシュ・ランフォード。今年の海の家は黒字の見込みだ。しかもグリフォンピーク島の問題も解決するとは。やはり私の見込んだ冒険者なだけはある」


 ギルド長、エトガー・キルステンさんに賛辞を送られたのだった。

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