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その先は細い通路が続いてた。
薄暗く、じめじめしていて不気味だ。
プリシラもマリアも不安そうな面持ち。
「次はどんな試練が待っているのでしょう」
「あれで終わりではありませんの?」
「うーん、どうじゃろうな」
そんなときだった。
――立ち去れ。
そんな低い女性の声が響き渡ったのは。
「ひゃあああっ!」
「なんですの!?」
マリアとプリシラが俺に抱きつく。
「おぬしは大地の神か?」
スセリが頭上の空間に問いかける。
――立ち去れ。
しかし声は同じ言葉を繰り返すばかりだった。
しばらくすると声は聞こえなくなった。
二人が俺の身体から離れる。
「い、今のは一体……」
「戻ったほうがよろしいのでしょうか」
もしかしたら、部外者の俺たちが神聖な場所に立ち入ったせいで、大地の神の怒りにふれてしまったのかもしれない。
だとすると、すぐにでも引き返して代理の人物を向かわせるべきだ。
「いや、進むのじゃ」
しかし、スセリがそう言う。
「人から『やれ』と命令されたら『嫌だ』と言いたくなるのが人間のさがというものじゃろう?」
ドヤッと笑った。
それはスセリ、お前だけだ……。
俺とプリシラとマリアはそろって呆れた顔をしていた。
「冗談じゃからそんな顔をするでない。試練のたびにさっきの警告をされるのかもしれんぞ」
「そうかもしれませんわね」
一応、年長者の意見を尊重して先へと進むことにした。
少し歩いているが、先ほどの声は聞こえてこない。
そして通路が終わって先ほどと同じような広間に出た。
だだっ広い、天井の高い空間。
声や足音がよく反響する。
先ほどのゴーレムがいた空間とは違った箇所がひとつだけあった。
「台座か……?」
広間の中央に、一段高い台座のようなものがあった。
台座は縁があり、中央部分がへこんでいる。
なにかの物体を固定するもののようだ。
気になるものの、いったんそれを無視して先へと進もうと試みる。
ところが先へ続くであろう石の扉はかたく閉ざされており、それを阻んでいた。
となると、やはり中央の台座があやしい。
「アッシュさま、これはなんでしょう?」
プリシラがなにかを抱えていた。
石板だ。
なんの変哲もない、石の板。
「あら? よく見るとその石板、あちこちに落ちていませんこと?」
俺たちは広間に散らばっている石板を集める。
石板は全部で16枚あった。
なにかを固定するための、中央がへこんだ台座。
16枚の石板。
それで察しはついた。
「わかりましたっ。この石板を台座にはめるんですっ」
プリシラが意気揚々と石板を台座にはめていった。
さすが半獣。重い石板を次々と手にしててきぱきとはめていく。




