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90-4

 余った一日をどちらが支配するかの争い。

 正直、肩透かしだ。


 そんなくだらないことで争いを起こしていただなんて。

 一日くらい相手に譲ってやればいいのに。

 どうやらほかのみんなも同じ意見だったようで、一様に呆れた面持ちをしていた。


 グリフォンピーク島の人々は毎日、捧げものを持っていき、争いをやめるようお願いしているのだという。

 しかし、二柱の神は争いをやめない。


 神は不死なる存在。

 戦ったところで死ぬことはない。

 では、どうやって決着をつけるのかというと、相手に「まいった」と言わせたら勝ちなのだ。


「神の格は信仰に依るのじゃ。そして信仰は権威がないといけぬ。どれだけくだらんことでも、相手より劣っているという事実は沽券に関わるのじゃ」


 そうスセリが説明してくれた。



 俺たちは風の神と雨の神がいる山を登った。

 大量の水分を含んだ風が吹きすさぶのを耐えながら歩く。


 山の頂上にたどり着く。

 山頂の平たい場所の中央で、二人の半裸の男性が肉弾戦を繰り広げていた。


 緑の髪の男と青の髪の男。

 いずれも痩せていながらほどよく筋肉がついている、極めて健康的な肉体だ。


「彼らが神さまかしら」

「膨大な魔力を感じるのじゃ。間違いなく雨の神と風の神なのじゃ」


 二柱の神は激怒した表情でけんかをしている。

 近づこうものなら巻き添えは必至。


 ……プリシラとスセリとマリアは俺をじっと見ている。

 やはり俺が仲裁しないといけないようだ。


「あの、すみません」

「ああっ!?」

「なんだ、てめえは!」


 けんかを中断した二人が俺をにらみつけてきた。


「雨の神と風の神でしょうか」

「……おい、てめえ」


 緑の髪の男が俺の胸ぐらを掴んでくる。

 治安の悪い町の不良に絡まれた気分だ。


「なんで今、俺の名前を後にした。『風の神と雨の神』って言い直せ」


 ど、どうでもよすぎる!


「いいや、言い直す必要はないぜ。雨の神である俺がすべてにおいて優先されるべきだからな」

「てめえ! ぶっとばす!」


 二人が再びけんかを始めてしまった。

 殴り、殴られを交互に繰り返す。


 理性なんてとっくにかなぐり捨てている。

 まともな説得は無理だと確信した。


「けんかはやめてくださーいっ!」


 プリシラが叫ぶ。

 すると、二柱の神はぴたりと動きを止め、ぎろりとプリシラをにらみつけた。

 即座に俺の背後に隠れるプリシラ。


「てめえら、まだいたのか」

「ぶっとばされてえのか」


 俺たちはここに来た理由を二人に話す。

 二人がけんかをしているせいで連日嵐で困っていること。

 けんかをやめてほしいということ。


「おぬしらも困るじゃろ。島の人々がおぬしらを嫌って信仰を捨てられては」

「まあ、そうだが」

「畏敬の念は畏怖と敬意の均衡が大事じゃ。今のままでは敬意を忘れられてしまうのじゃ」

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