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90-3

 グリフォンピーク島には二柱の神が祀られている。

 一柱は風を司る神。

 もう一柱は雨を司る神。


 風の神と雨の神が争いを始めたせいで嵐が起きているのだ。

 とんだ迷惑な神さまだ。


「神さまもけんかをなさるのですね」

「むしろ神々は争いを好むものが多い。戦ってケリをつけねば気が済まぬ性分なのじゃ」

「争うのは結構ですけど、わたくしたち人間を巻き添えにしないでいただきたいですわ……」


 マリアの顔が船酔いのあまり青ざめている。

 かなり調子が悪そうだ。


「マリア。おぬし、ホントに三半規管が弱いのじゃな」

「サンハンキカン……?」

「身体の平衡感覚に関わる部位じゃよ」


 海はかなり荒れている。

 灰色の空の下で混濁した海がうねり暴れている。


「マリア、吐きたくなったらすぐ言えよ」


 マリアの横に座り、彼女の背中をさする。

 マリアはこくりとうなずいた。


「……」

「プ、プリシラ……?」


 プリシラが空いている俺のとなりに座る。


「わ、わたしも船酔いしたかもしれませんっ。これはアッシュさまに背中をさすっていただかないと治らないですっ」

「わ、わかった……」


 プリシラの背中もさする。

 彼女は飼い主になでられた犬みたいな、しあわせそうな表情になった。


「てへへー。アッシュさまになでられちゃいましたね、マリアさま」

「……うえっぷ」


 マリアはそれどころではなさそうだった。



 海は荒れていたが、どうにか船は無事にグリフォンピーク島に到着した。

 予定外の船だったので、すぐさま島民の大人の男たちが集まってきた。


「あんたら、なんの用事だい?」

「俺たち冒険者ギルドの者です。争っている風の神と雨の神を鎮めにきました」

「冒険者か。あんたら頼りになるのかい?」

「ギルド長の推薦だと言えばわかってくれますか?」


 大人たちは顔を見合わせる。

 それからこそこそ話し合いを始める。

 それから彼らは歓迎の態度を見せてくれた。


「まあ、王都から助けをよこしてくれたのは助かるよ。村長の家に連れてくよ」


 俺たちは村長邸に案内された。

 そこで村長から神々の争いの発端を聞かせてもらった。


 本来、風の神と雨の神は一年を半分ずつ分け合ってグリフォンピーク島を支配している。

 それぞれ同じ日数、支配権を得られていたので争いはなかった。


 ところが、今年は『うるう年』で一年の日にちが一日多い。

 その余った一日の奪い合いが二柱の神の間で起こったのだ。


 聞くところによると、うるう年が訪れるたびに二柱の神はけんかを起こすのだという。

 そうなると天気が絶えず荒れる、ひどい一年になるのだと村長はため息交じりに言った。

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