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1-6

 俺たちはここで死ぬのだろう。

 プリシラだけでも逃げ延びてほしかったが、そうもいかないらしい。

 せめてもの抵抗をするため、腰からナイフを抜こうとしたそのとき、


 ――魔法を使うのじゃ!


 聞き覚えのある少女の声が頭の中に響いた。

 リュックサックの中に入れていた魔書『オーレオール』がひとりでに飛び出し、俺の目の前に浮遊した。


 ――はやくワシを受け取るのじゃ!


 少女の声に従って『オーレオール』を手にする。

 すると、俺のとなりに昨日、地下室で出会った銀髪の少女スセリが突如姿を現した。

 プリシラが「ひゃあっ」と驚いて飛び跳ねる。


「誰ですかあなた!?」

「今はそんなことどうでもよかろう、小娘。アッシュよ、呪文を唱えるのじゃ!」


 三匹のオオカミが飛び掛かってきた。

 考えている暇はない!

 俺は頭の中に浮かんだ言葉をとっさに叫んだ。


「風の刃よ!」


 刹那、俺がかざした『オーレオール』から魔力の刃が生じる。

 まばたきの一瞬すら許さぬ速さで風の刃は一直線に走り、襲い掛かるオオカミたちを切り裂いた。

 鋭き刃が手足を、首をもぎ取る。


「倒したのか……」

「すごいです、アッシュさま!」


 魔力の刃で切り裂かれたオオカミたちは地面に倒れ、やがて消滅した。

 ぴょんぴょん飛び跳ねてよろこんでいたプリシラは、すぐまた耳をぴんと立てて表情を険しくした。


 今度は俺にも聞こえる。

 ずしん、ずしん、ずしん……。

 巨大ななにかがこちらに迫ってくる、重い足音が。


 木立の間から現れたのは、石造りの巨人、ゴーレムだった。

 ゴーレムは高位の召喚獣。兄上たちにはまだ呼び出せない。

 だとするとコイツは父上の差し金か。


「案ずるなアッシュよ。おぬしには『オーレオール』がある」


 隣に立つスセリがそう言う。


「『オーレオール』は万能の魔書。持ち主に最強の力を与える」


 この魔書を持った瞬間から、俺の中にとてつもない魔力がみなぎっているのを感じていた。

 これが魔書『オーレオール』の力……。

 スセリが俺の肩に手を触れる。


「さあ、唱えるのじゃ」


 俺はゴーレムと対峙し、『オーレオール』をかざす。

 頭から指先まで、膨大な魔力が全身を駆け巡るのを感じる。


 身体が熱い。

 頭の中に浮かんでくる呪文。

 俺はそれを高らかに唱えた。


「来たれ!」


 頭上に描かれた魔法円から剣が現れる。

 金属召喚で剣を呼び出した。

 剣を手にし、ゴーレムに斬りかかる。


 強固な石の身体のゴーレムを俺は一刀両断した。

 通常の刃などはじかれるはずなのに、一撃で斬ったのだ。

 静寂が訪れる。


「バカな!」


 そんな声が聞こえてきた。

 木の陰から現れたのは――父上。


「お前がその手に持っている魔書は、まさか『オーレオール』か。そうか、お前が選ばれたのだな」


 父上が俺たちの元へ近づいてくる。

 プリシラが俺の背中に隠れる。


「アッシュよ。それは『オーレオール』だな?」

「はい」

「昨日の件は撤回しよう。地下室に無断で入ったのも不問とする。お前は選ばれし者だ。ランフォード家に戻るのを許そう」

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