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86-1

「助けてほしいんですけどー」


 フレデリカが『シア荘』にやってくるなり、そうお願いしてきた。

 助けてほしい?

 どうやら困りごとらしい。


「アッシュさんたちって冒険者ですから、お願いごとってやっぱ冒険者ギルドを通さないといけなかったりしますー?」

「フレデリカは俺の友人だ。気にせず相談してくれ」

「さすがアッシュさん。えっとですね――」


 フレデリカは肝心な頼みごとを言おうとしたところで急に黙ってしまった。

 それから「うーん」と悩みだす。

 言いにくい頼みごとなのだろうと思い、彼女が自発的に言い出すのを待つ。


「やっぱりいいや」

「えっ? いいのか?」

「えっとですねー、実はウチの宿に今、ヘンなウワサが広まってるんですよー」


 フレデリカの一家が経営している宿『ブーゲンビリア』は、王都では結構有名で、なかなか繁盛している。

 順調に経営しているところに『ヘンなウワサ』が立てば困るはず。

 なのにフレデリカは俺にその解決を頼むのをやめた。


「遠慮しなくていいんだぞ。俺にできる範囲で手助けするから」

「いえ、遠慮はしていないんです。よーく考えてみたら、この問題、解決しないほうがいいかなーって思い直したんです」

「どうしてだ?」

「だってー、お客さんが減ったら接客しなくていいじゃないですかー。私楽できるしー」


 呆れた。

 俺は思わずため息をついてしまった。

 そしてこう言った。


「お客が減ったら儲けも減って、フレデリカのおこづかいも減らされると思うぞ」

「えっ!?」


 びっくりするフレデリカ。

 それから心底困った表情に変わる。


「そ、それだけはぜったいイヤです……」

「なら、解決しないとな」

「はい……」


 そういわけで俺はフレデリカの依頼を請け負うことになったのだった。

 さて、『ブーゲンビリア』の『ヘンなウワサ』とはなんだろう。


「ウチの宿に幽霊が出るっていうんですよ」

「幽霊か……。いたずら好きな幽霊が宿泊客を脅かしているのかもしれない」

「アッシュさん、幽霊を信じてるんですかー?」

「半分幽霊みたいなやつがご先祖さまにいるからな」

「あー、たしかに」

「聞いておるのじゃ」


 ドアの陰からスセリがぬっと顔を出してきた。

 幽霊が実在するかどうかはさておき、なんの原因も無くウワサが広まるとは思えない。

 幽霊と思わせるなにかが『ブーゲンビリア』に出てくるのではないか。


「本当に幽霊が出るか確かめてみよう」

「頼もしいですねー」

「ワシは遠慮するのじゃ」


 スセリは幽霊が苦手だからな。

 プリシラもマリアも別の依頼を請け負ってるから、今回は俺一人だ。

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