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「セヴリーヌやフーガもやっておるのじゃ」
「知らなかった」
「セヴリーヌはともかく、フーガは古代文明の研究のためじゃがな」
賢人フーガの子孫にして魔法研究所の責任者であるフーガさん。
あの人にはいろいろとお世話になった。
今頃どうしているだろう。
「しかし、フーガめ。ワシよりランキングが上とは生意気な」
「フーガさんはゲームが上手なのか?」
「うむ。学者肌だからかゲームを理論的に分析するのに長けておるのじゃろう」
スセリは歯がゆそうに眉をひそめる。
「課金さえできればのう」
「課金ってなんだ?」
「お金を支払ってゲームに有利な要素を買うことじゃ」
「お金って、もしかして現実のお金のことか?」
「いかにも」
俺は驚いた。
遊びの中に料金を支払う要素があるなんて。
「知らんかったのか? ゲームは無料で遊べるが、快適に遊ぶには課金が必要なのじゃ。アイテムを持てる量が増えたり、経験値が多くもらえたり」
「な、なんかあこぎだな……」
「無作為に強力なアイテムを入手できる、いわゆる『ガチャ』を引くのにもお金がいるのじゃ。くくく……、これは悪魔の発想じゃぞ」
ガチャというはいわゆるくじ引きらしい。
くじであたりを引けば強力なアイテムが手に入るのだとスセリは説明する。
そこまでくるともはや賭博だな……。
実際、旧人類はこのガチャにのめりこんで破産するものが後を絶たず、ちょっとした社会問題に発展したのだとスセリは補足した。
「射幸性というのは人間の理性を狂わせるのじゃ。いともたやすく」
「スセリは絶対狂わせられる人間だな」
「なにを言う。ワシはそのへんはわきまえておるつもりじゃぞ」
さっき自分が言ったセリフを早くも忘れている。
「このゲームは今、誰にも運営されておらん。だから課金のシステムなど機能していない要素が多いのじゃ。誰かが古代文明を解き明かしてゲームの運営者になれればのう」
「スセリはなれないのか?」
「ワシは魔術師であって科学者ではない。適任なのはフーガじゃろうな」
でも、あの真面目なフーガさんが賭博めいたゲームを運営するとは思えない。
それに課金要素が解禁されたらセヴリーヌのような自制心のない人間が不幸になる。
このゲームはこのままの状態が一番いいのだ。
「ワシの新たな野望はな、このゲームの運営を再開させることなのじゃ」
そのためにやらなくてはならいことは三つあるとスセリは言う。
サーバーという、ゲームを動かしている装置を見つけること。
ゲームの運営方法を解き明かすこと。
運営者を見つけること。




