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翌朝、再び列車に乗って旅へ。
……というわけにはいかなかった。
駅に行くと、そこにあるはずの列車はなく、出発は延期になったと駅員に告げられた。
しかも、いつ出発するかのめどはついていないという。
原因は列車の故障。
俺たちは思いがけずこの町で足止めを食うはめになったのだった。
だが、スセリもプリシラもマリアも黙って待っている気はないらしい。
「ワシらでこの問題を解決するのじゃ」
「スセリ、列車の故障が直せるのか?」
「なにを言っておるのじゃ。直すのはアッシュ、おぬしなのじゃ」
無茶を言う。
俺だって列車を直せるわけがない。
俺たちにできるのは、列車の修理が終わるのを辛抱強く待つことだけ。
「アッシュさまならきっと解決できますっ。ですよね、マリアさまっ」
「そのとおりですわ」
信頼されているのはうれしいものの、無理なものは無理だ。
そう説得したところで彼女たちが諦めるはずもなく、俺たちは列車が停まっている車庫へと向かったのだった。
案の定、技師たちは部外者の来訪にあからさまに嫌な顔をした。
「どうじゃ、列車は直りそうか?」
「おじょうちゃん、ここは遊ぶ場所じゃないよ。帰りなさい」
「の、のじゃあ……」
幼い少女の姿があだになった。
プリシラが俺に期待の間差しを向けている。
マリアがひじでわき腹をつついてくる。
しかたない……。
「あの、どうしたら列車は直るのでしょうか」
「壊れてしまった部品を遠くの町から取り寄せる必要があるからねえ。まあ、数日はかかるよ」
それを聞いて俺ははっとする。
もしかすると、本当に俺が解決できるかもしれない。
「つまり、部品があればすぐに発車できるんですね?」
「そうなるね」
「なら、俺がその部品を持ってきます」
それを聞いた技師たちは驚いた顔をした。
「壊れた部品を見せてもらえませんか」
技師が壊れた部品を持ってくる。
……思ったとおり、部品は金属だ。
俺は精神を集中させる。
そして魔書『オーレオール』から魔力を受け取る。
その魔力を片手に集中させ、手を掲げて唱えた。
「来たれ!」
空中に魔法円が出現し、そこから列車の部品が現れた。
金属召喚に成功した。
技師たちが「おお!」と声をあげる。
「すごい。新品の部品だ」
「魔法で作ったのかい?」
「作ったというか、呼び出したんですけどね」
「これですぐにでも列車を直せるよ。ありがとう!」
それから半日ほどして列車の運行が再開したのだった。
列車は俺たちを乗せ、だだっ広い平原に引かれた線路の上を走る。
「さすがアッシュさまですっ」
プリシラは自分のことみたいに誇らしげだ。




