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スセリがカードを手に取ってしげしげと眺める。
スセリも銀色の髪の少女。
カードの絵柄も銀色の髪の乙女。
なんらかの関係があるのでは――というのは考えすぎだろうか。
それにしても、占いの結果は『わからない』だなんて。
今回の冒険も一筋縄ではいかなそうだ。
日が暮れるころ、列車は小さな町の駅に停車した。
今日の運行はここまでで、乗客はいったん降りて町で一泊する。
その間、列車も燃料を積んだり整備をしたりする。
俺たちは冒険者ギルドが手配してくれた宿屋に行き、チェックインした。
「長旅お疲れさまでしたー。ゆっくりとおくつろぎくださいねっ」
宿屋の受付はプリシラと同い年くらいの女の子だった。
茶色いおさげの髪の純朴そうな少女だ。
家の手伝いなのだろうか。
彼女は元気な笑顔で接客してくれた。
きっと素直で明るい性格なのだろう。この子がいるだけで家庭も明るくなりそうだ。
どこぞの宿屋の看板娘は見習うべきだな。
「かわいいな」
ついぼそっとつぶやいてしまったその瞬間、プリシラとマリアがぎょっとした顔になった。
それからジト目で詰め寄ってくる。
「アッシュさまー?」
「あなた、婚約者の前でいい度胸していますわね」
「誤解だって! 明るい元気な子だなって思ったんだ!」
「ありがとうございまーすっ、お客さまっ」
「あまりにもうかつなのじゃ」
少しばかりの時間を言い訳に費やしたあと、夕食を食べに大衆食堂に足を運んだ。
広い食堂にテーブルがいくつも並び、客たちが食事を楽しんでいる。
俺たち以外の列車の乗客らしき人も結構いた。
「いいにおいですー」
「おなかぺこぺこですわ」
「酒なのじゃー」
「スセリにはたぶん、酒は出してくれないと思うぞ」
空いている席に座ると、すぐさま店員が注文を聞きにやってきた。
俺は鶏肉のバター炒めと決めていた。
……はずが、スセリが余計なことを言いだした。
「アッシュよ。おぬし、この挑戦を受けるのじゃ」
スセリがテーブルの脇に置かれていた紙をよこしてくる。
――超大盛りカレー! 時間内に完食できたら賞金をさしあげます!
と書かれている。
「カレーってどんな料理だ?」
「ライスに辛いシチューのようなものをかけた料理なのじゃ」
「おいしいのですか? スセリさま」
「いにしえから親しまれておるからおいしいのじゃろう」
スセリによると、古代文明では大衆に人気の料理だったらしい。
カレーという料理には興味あるものの、別に旅の資金に困っているわけではないし、俺は大食いでもないから挑戦するつもりはない。
と考えていたらスセリが先手を打ってきた。
「ここで逃げてはランフォード家の面汚しじゃぞ」
「大げさすぎるだろ」




