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83-1

「いけませんわ!」

「ひえっ」

「なっ、なんじゃあ!?」


 いきなりマリアが大声出したので三人とも驚く。

 気持ちよく寝ていたスセリがなにごとかと目を覚ました。


「いけませんわよ、アッシュ」


 マリアが真剣な表情で再び言う。

 なにがいけないのかわからず、俺とプリシラは顔を見合わせる。

 びっしと俺の鼻先を指でさしてくる。


「わたくしの夫になろう者が、そんな弱気な考えではいけないと言っていますの」

「夫になるつもりは今のところ――」

「つべこべ言わずにカードを引きますのよ!」


 扇状に広げた複数のカードをマリアがぐいっと出してきた。

 どうやら占わなければならないらしい。

 しょせん素人の占い。


 意地になって拒否する理由もないので、俺はおとなしくカードを引くことにした。

 マリアが差しだしてきた5枚のカード。

 いずれも裏面を向いていてカードの絵はわからない。


「悩まずに直感で選んでくださいまし」


 そう言われたので俺は深く考えず真ん中のカードを選んだ。

 マリアがそのカードを空いた手で引く。


「ド、ドキドキしますね。アッシュさま」


 プリシラは緊張している。

 真逆にスセリはあくびしている。


「アッシュの引いたカードは――」


 マリアがそのカードの表面を見た瞬間、目をまんまるに見開いた。

 尋常じゃなく驚いている。

 しかも、驚愕の中に困惑の感情も見られる。


 ただの不吉な結果ではなさそうだ。

 マリアは「どういうことですの……」としきりに首をかしげていた。


「もったいぶってないで教えてくれよ。占いの結果はどうなんだ?」

「それが」

「それが?」

「わかりませんの」


 思いがけぬ答えだった。

 わからない?

 占い方がわからない――という意味ではなさそうだ。


「マリアさま。アッシュさまはどのカードを引かれたのですか?」

「これですわ」


 マリアが俺たちに表面を見せる。

 そこに描かれていたのは――銀色の長い髪が美しい乙女。

 素人目には良い運勢に感じられる絵柄だ。


「このカードはなにを表してるんだ?」

「だから、言いましたでしょう。わかりませんの。こんなカードわたくし、持っていませんの」

「知らないカードが紛れ込んでいたのですか!?」

「そうですわ」


 どうりで困惑の表情を浮かべるわけだ。

 占いの手引書にもこんな絵柄のカードは載っていないという。

 俺が引いたのは正体不明のカードだった。


 銀色の乙女のカードはなにを暗示しているのだろう。

 神秘的な絵柄のこれからは、不幸な印象は伝わってこないが。


「思いがけぬ出来事が起こる――ということにするのじゃ」


 スセリが言った。


「それにしてもきれいなカードじゃの。幸先は良さそうなのじゃ」

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