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スセリの予感は的中した。
機械人形の討伐に失敗した報告をしようと冒険者ギルドに戻ると、キルステンさんが驚くべきことを告げた。
遺跡の各地に出没する機械人形たちが突如として、いくら壊しても再生する不死身と化したのだ。
「ナノマシン!?」
「そのようじゃの」
「お前たち、機械人形どもが不死身となった原因を知っているようだな」
俺たちは類人猿型機械人形との戦闘の報告も兼ねてナノマシンについてキルステンさんに話した。
キルステンさんは苦々しげに眉間にしわを寄せる。
「そのナノマシンとやらのせいで機械人形の身体が再生するというわけだな」
しかし、まだ疑問が残っている。
あの類人猿型だけではなく、どうして各地の機械人形が一斉に不死身になったのだろう。
「これはワシの推測じゃが、あらゆる機械人形にはもともとナノマシンが搭載されていたのじゃろう。旧人類の文明の終焉と共にナノマシンも眠りについたが、なんらかの拍子でその眠りがさめたのじゃ」
「意図的にか」
「そこまではわからん。まあ、可能性としてはじゅうぶんにあるがの」
「スセリさま。わたくしたちはどうすればよろしいですの?」
「まー、これも推測なのじゃが――」
ナノマシンの機能がいっせいに目覚めたということは、どこかにすべての機械人形を制御する場所があるのではないか。
何者かがそこに立ち入り、ナノマシンを目覚めさせる操作をした。
そうスセリは推測した。
だとすると、早急にその場所を見つけて機能を停止させないといけない。
誰かが悪意で操作をしたのなら、機械人形を手駒にしてギルドや国に攻撃を仕掛けてくる危険がある。
不死身の機械が敵となると相当やっかいだ。
「これは一大事だ。国の平和を揺るがしかねん」
「ど、どうしましょう! アッシュさま!」
キルステンさんが外套を羽織り、帽子をかぶる。
「私はこのことを国王陛下にお伝えしてくる。アッシュ・ランフォード。お前たちはこの問題を解決するための行動に移れ。即座にだ」
「わかりました」
それからキルステンさんは胸のバッジを俺に渡してくる。
「ギルド長の権限を一時的にお前にゆだねる。あらゆる手段を用いて解決にあたれ」
「お、俺なんかがそんな大任を!?」
「適任だ」
早口でそう伝えると俺たちの前から去っていった。
「……で、どうしますの? アッシュ」
マリアが俺に尋ねる。
「アッシュさまなら解決できますよね……?」
「当然、できるのじゃろうな」
三人の視線が俺に集まっている。
一人は怪しいが、みんな俺が機知を働かせて解決策を出すことを期待している。
「そうだな。まずはナノマシンが機能している範囲を調べるべきだと思う」




