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80-3

 少しゲームで遊んでみたが、ユリエルにはどうも面白さがわからないようすだった。

 安心した。

 スセリみたいにどっぷりゲーム漬けになられては精霊竜も困るだろうし。


「あ、あのっ」


 プリシラが手を挙げる。


「端末にはお互いにおしゃべりができる力もあるんですよね?」

「通話じゃな」

「その通話というので、精霊界に行ってもユリエルとお話しできたりはしませんか?」

「うーむ」


 スセリは腕組みしてうなる。

 眉間にしわを寄せている。


「そればかりは実際に試してみんとわからんが、あまり期待はしないほうがよいのじゃ」


 精霊界と人間界は空間的にはつながっていない。

 だから通話もおそらくはできないとスセリは説明した。


「でも、でもでも、できるかもしれないよ、ユリエルっ。あっちに行ったら試してみてねっ」

「わかった。『稀代の魔術師』。通話っていうのを教えてくれ」


 ユリエルに通話の方法を教えた。

 もし、通話ができるのなら、俺とセヴリーヌみたいに遠く離れていてもさみしくない。

 望みの薄い希望だが、今はその希望を信じることにした。



 その夜。


「おわっ!?」


 ベッドで眠っていたら突然ベルの鳴り響く音がして俺は飛び起きた。

 端末の着信通知だ。

 テーブルに置いてあった端末を手にすると、画面に表示された通話のボタンに触れた。


「ア、アッシュ……」


 画面にユリエルの顔が映った。

 緊張した面持ち。

 俺は笑みを浮かべて言葉をかける。


「どうした? こんな夜更けに」

「ちゃんと通話できるか試してみたんだ。べっ、別にお前と話したかったわけじゃないんだからな。そこを勘違いするなよっ」


 ユリエルが視線をそらす。

 ユリエルの顔が俺の端末に映っているということは、彼女の端末には俺の寝ぐせのついた寝ぼけた顔が映っているというわけか。

 彼女はおずおずとこう言う。


「ね、寝てたのを起こしちゃったか……?」

「いや、まだ起きてた」

「ならよかった……」


 果たしてこの顔でウソが通じるかと思ったが、ユリエルは安心したようすだった。


「眠ろうして目を閉じてたらアタシ、こんなことを思ったんだ。別れがさみしいのなら、初めからお前たちと出会わなければよかった、って」


 それから彼女は問いかけてくる。


「アタシの思っていること、間違ってるか?」


 出会いと別れは想い合うつがいのようなもの。

 スセリはそう言っていた。

 別れを恐れて出会いから逃げていたら人は極論、孤独に陥る。


「間違ってると思う。そうでなければ、ユリエルとの思い出を否定しなくちゃいけないから」

「そうか。そうだよな」


 ユリエルの目から涙が滑り落ちる。

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