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腹を立てている本人には悪いが俺は「なるほど」と納得してしまっていた。
もちろん口には出さなかった。
「と、とにかく助かった。みんな、ありがとう」
無事に合流できた俺たち四人は再び洞窟を進んでいった。
地図描きのプリシラのおかげで道には迷わなかった。
しばらく進むと、進む方向から風が吹いてくるのに気付く。
うっすらと明るくなってきた。
自然と俺たちは早足になる。
道を曲がると、ついに光を――洞窟の出口を発見した。
「外に出られましたーっ」
ついに俺たちは洞窟を出られたのであった。
みんな、ほっと息をつく。
なんとか無事に出られてよかった。
久しぶりの太陽がまぶしくて目を細める。
少しずつ光に目を慣らしていく。
山をはさんだ反対側に俺たちはいた。
背の低い緑の草が茂る平原。
めったに人が訪れない場所なのだろう。道は整備されていない。
「さて、マルタの木はどこにあるのかしら」
周囲を見渡す。
平原には木がいくつも生えている。
どれもありふれた木に見える。
このだだっ広い野原からマルタの木をさがすとなると骨が折れる。
「マルタの木の見分けかたはご存じですか。ラピス王女」
「木はわかりませんが、木の実はこういう形をしているらしいです」
ラピス王女が手帳を開く。
そこには木の実が色鉛筆でスケッチされていた。
緑色の細長い木の実だ。
「わー。ラピス王女さま、絵がとてもお上手なんですねっ」
プリシラが手帳を覗き込んで言う。
ラピス王女は「それほどでもありません」と言いながら自慢げな顔をしていた。
「この木の実を片っ端から探していくしかありませんの?」
「いえ、マルタの木は水辺に生えていると図鑑に書かれてありました」
「水辺か……」
「水辺ですねっ」
プリシラが鼻をくんくんと動かす。
においを嗅いでいる。
「あっちから水のにおいがしますっ」
水辺があるらしい方向を指さした。
さすが半獣。嗅覚も鋭い。水ににおいなんてあるんだな。
俺たちはプリシラが指さしたほうへ進んだ。
プリシラの言うとおり、そこには泉があった。
その周りには木が生えている。
これがマルタの木の実がなっている木なのだろう。
……ところが俺たちはそれを確かめず、少し離れた場所からさっきからずっと眺めているだけだった。
思いもよらぬものがそこにいたからだ。
「機械人形がどうしてこんなところに……」
古代の人類が遺した機械人形が泉を守っていたのだ。
俺たちの少し手前の地面が黒く焦げている。
つい先ほど、機械人形が光線による攻撃をしてきた跡である。
泉に近づこうとする者を機械人形は敵とみなしているらしい。
機械人形は長方形の身体から四つの足を生やし、這うように歩いている。




