77-5
俺とプリシラとマリア、それとラピス王女の四人で洞窟を進んでいく。
慎重な足取りで。
先頭は俺。その後ろをマリア。真ん中にラピス王女。最後尾はプリシラだ。
洞窟には冒険者の仕事で何度か入っているが、魔物には毎回遭遇していた。
ラピス王女がいる今回に限ってそうはならないというわけにはいかないだろう。
光球が照らす範囲は狭い。目を凝らして先をじっと見る。
「プリシラ。道はこっちでいいんだよな?」
「はい。このまま進んでください」
地図を見ながらプリシラが言う。
地図には洞窟の反対側の出口が描かれているからそこへ行けばいい。
今いる場所がわからなくならないよう、ゆっくりと慎重に歩く。
「なんだかこわいですね……」
「あら、それではラピス王女は帰りますの?」
「いっ、いえっ。ついていきますっ」
王女さまの好奇心にも困ったものだ。
もしも彼女にけがでもさせたら俺たち、牢屋に入れられてしまうのだろうか……。
王さまは娘を大事にしている感じだったからじゅうぶんありえる。
「みなさんはいつもこういう危険な場所に行くのですか?」
「もちろん。冒険者ですもの」
「勇敢ですね。わたくしも見習わなくては」
「み、見習わなくて結構ですわよ……」
王女さまが冒険者を見習われては困る。
ラピス王女が今度はプリシラが持っている地図を覗いてくる。
「プリシラさん、これを読んでいるのですか?」
「そうです。えーっと、今わたしたちはここにいるんです」
「すごいですね。まだ子供なのにこんな難しいものを理解できるなんて」
「てへへ」
プリシラが地図の読み描きができるおかげで、俺たちの冒険はかなり楽になっている。
彼女がいなくては洞窟や遺跡の探索は不可能と言っても過言ではない。
「ちょっと待ってください!」
プリシラが声を上げる。
俺たちはぴたりとその場にと立ち止まる。
プリシラのぴんと立った獣耳がぴくぴくと動いている。
「音がします。この先に魔物がいます」
俺たちは各々の武器を手に取る。
「マリア。ラピス王女を頼む」
「おまかせあれ」
マリアをラピス王女の護衛につけて下がらせ、俺とプリシラが前に出た。
暗闇の中から魔物が姿を現す。
俺たちの前に立ちはだかってきた魔物は甲殻類の姿をしていた。
赤い甲羅に細長い節の足。
二本の前脚は発達したハサミになっている。
カニに類似しているが、その大きさは人間の子供の身長ほどはある。
俺は召喚魔法で剣を召喚する。
光の矢や炎の弾などの攻撃系の魔法使ったら落盤を起こす可能性がある。
洞窟では魔法の使用には細心の注意をせよとギルドから言われていた。




