75-7
かろうじて細目を開けて前を見る。
精霊界へと続く空の裂け目が目の前にある。
そして行く手を阻むロッシュローブ教団の竜が複数。
「ワガハイに立ちはだかるとは愚か者めが!」
アスカノの大気を震わす怖ろしい咆哮。
その雄たけびに恐れをなしたのだろう。ロッシュローブ教団の竜たちは道をあけた。
邪魔者は排除した。
俺たちを乗せたアスカノフは緑の草原と青空が映る空の裂け目へと突入した。
そして俺たちは裂け目の向こう――精霊界へと到着した。
草原に降り立つ。
まぶしい日差し。
さわやかなそよ風。
なびく草原。
静かな海。
焦っていた気持ちが落ち着く穏やかな光景。
「精霊竜さま! 精霊竜さま! ユリエル、戻りました!」
ユリエルが叫ぶ。
しかし、反応はない。
「ユリエル。精霊竜さまはどこにいるんだ?」
「図書館の一番上にいるはずだが……。とにかく行ってみる!」
ユリエルは遠くにある白い建物――図書館に向かって駆けだしていった。
「ちょっと! ユリエル! ロッシュローブ教団がいるかもしれませんのよ! 単独行動はいけませんわ!」
「み、みなさん! あれを見てください!」
プリシラが指さした方向にみんなの視線が向く。
そこには傷を負った竜一体と、白いローブをまとった人間三人が倒れていた。
ロッシュローブ教団だ。
スセリと争ったのか。
それともブラックマターに襲われたのか。
「このまま放っておいては危険ですわね」
軽傷なのを確認すると、マリアが捕縛の魔法で竜とロッシュローブ教団の人間たちを縛り上げた。
「わたくしとノノさまとアスカノフはここに残ってこいつらを見張ってますわ」
「ユリエルさまはわたしが追いかけます。アッシュさまは――」
「俺はスセリをさがす」
役割が決まると、さっそくプリシラはユリエルを追いかけて図書館へと走っていった。
「アスカノフ。スセリがどこにいるかわかるか?」
「精霊剣の力を感じる方向ならわかる」
「それで構わない」
スセリもロッシュローブ教団もそこへ向かうのだから。
アスカノフは森のほうに頭を向ける。
「あの森の奥から精霊剣の力を感じる」
「わかった。ありがとう、アスカノフ」
「アッシュ。気をつけてくださいまし」
「マリアたちも。精霊界にはブラックマターっていう魔物が現れるから気をつけてくれ」
「アッシュ・ランフォードよ」
アスカノフが俺を呼ぶ。
「いざとなればお前が精霊剣承を果たすのだ」
「お、俺が!?」
俺は自分を指さす。
「お前は善なる人間。不幸をもたらす願いなどできまい」
「えーっと、それってほめてるんだよな……?」
「むろん、ほめているとも」
「アッシュくんはいい子ですものね」
ノノさんがくすくす笑っていた。
なんか、あんまりほめれている気がしないのだが……。
「今のうちに願いごとを決めておいてはいかが?」
「願いか……」
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