表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

520/842

75-1

「寝るときはこの服を着るのか?」

「そうですよ、ユリエルさま」


 ちょうど背丈も近かったのでプリシラのパジャマを着せてもらったらしい。

 新鮮な着心地なのか、そわそわしている。


「それじゃあ……」

「おやすみ。ユリエル」

「言われなくても寝るんだが」

「違うって。『おやすみ』は寝るときのあいさつなんだ」

「そ、そうなのか……」


 恥をかいたと思ったらしく、ユリエルは赤面する。


「おやすみ。ユリエル」


 俺はもう一度そう言う。

 ユリエルは照れくさそうに鼻をかきながらこう返した。


「おやすみ……。アッシュ・ランフォード」

「『アッシュ』って呼んでくれ」

「わかった。アッシュ。おやすみ」



 こうして『シア荘』に新たな住人が加わったのだった。

 昼間、俺とプリシラ、スセリとマリアは冒険者として仕事をこなし、ユリエルは精霊界でブラックマター狩りをする。夕方になると『シア荘』で団らんのひとときを過ごす。

 そんな日々を続けていくうちに、ユリエルはすっかり俺たちに心を許してくれるようになった


「プリシラ。アタシに持たせてくれた弁当、おいしかった」

「ふふっ。よかったです」

「またつくってくれ」

「もちろんです」


 特にプリシラとは親友と呼べるほど仲良くなっていた。

 休日はベオウルフも加えて三人で遊びに出かけることがもっぱらだった。

 今日も彼女たち三人は公園に遊びに行くという。


「アッシュさま。行ってまいります」

「ああ。行ってらっしゃい」

「……」


 ベオウルフが無言で俺を上目遣いで見ている。

 なにか言いたげだ。

 そんなに見つめられるとむずかゆくなる。


「ベオウルフ……?」

「アッシュお兄さん、さみしそうですね」

「えっ!?」


 思いがけぬことを言われて俺は変な声を出してしまう。

 別にさみしいことなんてないんだが……。

 むしろうれしいくらいだ。プリシラたちが仲良しで。


「すみません、アッシュお兄さん。プリシラを横取りしてしまって」


 横取りされてたとは思ってないんだがな……。

 最近俺とプリシラがいっしょにいる時間が減ったのは事実だが。


「はわわ、申し訳ありませんっ。わたしはアッシュさまのメイド。昼夜を問わずおそばにいるべきだったのを忘れていましたっ」

「そこまでしなくていいさ。それよりも、せっかくできた友達と思う存分遊ぶほうが大切だ」

「は、はいっ」

「……」


 今度はユリエルが俺とプリシラを交互に見ている。


「ベオウルフから聞いたんだが、お前たち、将来結婚するんだってな」

「なっ!?」


 またすっとんきょうな声を出してしまった。


「てへへ」


 プリシラは目を細めてしあわせそうな表情をしている。


「ちなみにボクは三番目のお嫁さんで結構ですので」

「みんなでアッシュさまのお嫁さんになりましょうねっ」

「アタシにはよくわからないんだが、結婚ってなにするんだ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ