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74-7

 プリシラとマリアが目配せしあう。

 それから、こくりとうなずき合ってユリエルに顔を近づけた。


「そんなのいけませんわっ。もっともっと楽しく暮らしませんと」

「ア、アタシには魔王としての罰が――」

「ユリエルさまはユリエルさまです。魔王ロッシュローブではありませんっ」


 二人の剣幕に気おされるユリエル。

 アタシにかまわないでくれ。

 ――とは言えないようすだ。


「スセリさまもなにかおっしゃってください」

「ワシか?」


 スセリが自分を指さす。


「……『稀代の魔術師』」


 ユリエルがからさまな敵意を感じさせる目つきになる。

 対してスセリは「やれやれ」と肩をすくめて相手にしていない。


「『稀代の魔術師』。お前に助言をこうつもりはない」

「そういう態度はいけませんわ、ユリエル。スセリさまと仲良くなさい」

「う、うぐ……。でも、こいつは――」

「ユリエルさま。スセリさまはちょっと風変わりですけど、とてもすばらしい方ですよ」

「いかにも。ワシは偉大なのじゃ。のじゃじゃじゃじゃっ」


 そんなふうに茶化したかと思いきや、急に真面目な口調になってこう言った。


「ユリエル。おぬしに罪などない。魔王としての前世に罪を感じているのなら、それは無意味なまぼろしじゃ。魔王は亡びた。それでおしまいなのじゃ」

「……」


 ユリエルは真剣な顔つきのまま押し黙っている。

 彼女が悩むのはわかる。


 俺だって前世が世界を滅ぼそうとした魔王だったとしたら、罪や責任を感じるだろう。

 記憶がないというだけでその罪と責任から逃れられるほど能天気な人間ではない。


 ……だとしても、ユリエルにはユリエルとしての生き方を選んでもらいたい。

 知らない過去に束縛され、無意味な責任感に押しつぶされ、自ら不幸な道を選ぶなんて悲しすぎる。


「じゃから、ほれ。もっと食うのじゃ」


 フォークにさしたリンゴをユリエルにさしだすスセリ。

 少しのためらいのあと、ユリエルは手でそれをとって食べた。


 変わってほしい。ユリエルには。俺たちとの交流で。


「ユリエルさま。これからはこの『シア荘』で暮らしませんか?」

「えっ? それは精霊竜さまがお許しになるかどうか……」

「なら、許可を取ってきてくださいまし。部屋はいくらでもありますから遠慮は無用ですわよ」


 ユリエルは精霊竜に会いに鏡を介して精霊界に戻っている間、俺たちは彼女の部屋を用意した。

 空き部屋を掃除して家具を配置して部屋を用意できたのとほぼ同時にユリエルは戻ってきた。


「どうでした?」

「いいっておっしゃってた」

「えへへ。よかったです。それではお部屋にご案内しますね」


 プリシラに連れられてユリエルは自分にあてがわれた部屋へと行った。



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