72-6
ロッシュローブ教団の凶行は許してしまったものの、俺たちはどうにか王さまを守ることができた。
そして後日、俺たちは王城に招かれた。
「王都剣術大会の件、よくやった。ほめてやるぞ、アッシュ・ランフォード」
玉座の間。
俺とスセリとプリシラ、そしてマリアはグレイス陛下の前にひざまずいている。
「自分は冒険者の一人として使命をまっとうしたにすぎません」
「その使命をまっとうしたからほめているのだ。話によると、お前がロッシュローブ教団の首魁を倒したらしいな」
「申し訳ありません。生け捕りにできていれば、ロッシュローブ教団の本拠地を白状させられたのでしょうが……」
「いや、かまわん。じゅうぶんだ。隣にいる詐欺師が言うに、あやつらは人間ではなく操り人形だったようだからな。どうせ捕まえたところで、操り主によって灰にさせられていただろう」
今年の王都剣術大会はロッシュローブ教団によって台無しにされた。
それによって決勝戦もうやむやになった――と思いきや、なんと、グレイス陛下は俺を優勝者にすると言ったのだ。
「名誉だけでは物足りまい。褒美もくれてやろう。お前はなにを望む?」
「一生遊んで暮らせるだけの財産を所望するのじゃ。のじゃじゃじゃっ」
「詐欺師。お前には聞いていない」
褒美か。
いきなり言われても思いつかない。
スセリの言うとおり、お金をもらうのが無難だろうか。
考え込んでいると、グレイス陛下の隣に立つラピス王女と目が合った。
ラピス王女がにこりと微笑む。
するとグレイス陛下は「ちょっと待て」と慌てだした。
「娘はやらんぞ!」
「えっ!? そっ、そんな大それた願いはしません」
「わたくしはかまいませんよ、お父さま」
「いかんいかん! お前に結婚はまだ早い!」
王さまとはいえ、この人も父親なんだな。
「そっ、そうだ! お前には『アレ』をやろう」
「『アレ』ですか……?」
俺たちはグレイス陛下に連れられて王城の宝物庫にやってきた。
「す、すごいです。宝物がいっぱいです……」
「宝の山とはこのことですわね……」
プリシラとマリアは目の前の光景に目をまんまるにさせていた。
宝物庫には金銀財宝が山のようにあり、薄暗い空間であるにもかかわらずまばゆく光り輝いていた。
グレイス陛下の後に続き、宝の山の間を縫うようにして歩いて宝物庫の奥へと進んでいく。
宝物庫の最奥にたどり着く。
そこには一本の剣が安置されていた。
他の宝物たちとは異なり、その剣には装飾がほとんどされておらず、あくまでも実用性を重視した見た目をしていた。