72-4
闘技場で大規模な戦闘が起きた。
翼無き竜の魔物を率いたロッシュローブ教団と、グレイス陛下とその兵士の戦い。
「リザードよ、蹴散らせ」
リザードと呼ばれた翼無き竜が兵士相手に大暴れする。
四人のローブを着た男たちが次々と兵士たちをナイフで切り刻んでいく。
「アッシュ・ランフォード。お前も戦いに加われ」
いつの間にか俺の隣にギルド長のエトガー・キルステンさんがいた。
「ロッシュローブ教団を捕らえよ。最悪、命を奪っても構わん」
キルステンさんが命じると、闘技場に現れた冒険者と思わしき人たちが乱戦に加わった。
さらにそこに、王国騎士団の騎士たちも現れる。
数では圧倒的にこちらが勝っている。
しかし、相手には凶暴なリザードがいる。
リザードは全部で3体。
1体に10人で挑んでいるが、リザードは弓から放たれる矢も剣の刃も硬質の皮膚ではじいている。
リザードがしっぽで兵士たちをなぎ払う。
5、6人の兵士たちがしっぽの一撃を受けて吹っ飛んだ。
まさしく怪物。
「上を見るのじゃ!」
上空にコウモリの翼を生やした悪魔が大勢いた。
船で戦ったガーゴイルだ。
ガーゴイルが乱戦状態の闘技場に飛来する。
増援か。
「これではらちが明かん。親玉を叩いたほうが手っ取り早いのじゃ。アッシュよ、ワシらはローブの男たちと戦うのじゃ」
ローブの男たちは全部で4人。
リザードやガーゴイルと戦うので精一杯の兵士たちを狙って攻撃している。
放っておいたらどんどん味方がやられてしまう。
「相手は手ごわい。二人で一人と戦うのじゃ」
俺とスセリは二人でローブの男の一人に戦いを挑んだ。
「光の矢よ!」
スセリが魔法を放つ。
気配を察したローブの男はそれを寸前で回避する。
「『稀代の魔術師』とアッシュ・ランフォード」
この声は――おそらくレイブンだ。
レイブンが突然、姿を消す。
背後か。それとも側面か。
神経を研ぎ澄ます。
ぞわっと殺気を感じ、振り返るのと同時に魔法の障壁で防御する。
そこにはレイブンが出現していてナイフを突き立てていた。
俺の首を狙ったナイフは障壁にはじかれる。
危ないところだった。
「こやつら、転移の魔法を使っておるのか」
「わからない。とにかく気を付けてくれ、スセリ」
視界の端で他のローブの男が戦っているのが見えた。
戦っている相手は、ベオウルフだ。
ベオウルフは前の戦いでローブの男に負けていた。今度は勝てるだろうか……。
信じるしかない。
「レイブン、諦めろ。お前たちのたくらみは終わりだ」
「終わりなどではない。お前たちとグレイス王を殺し、この国に混沌をもたらす」
「そうはさせない!」