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71-5

 ベオウルフの戦いが始まった。

 戦いが始まった途端、ベオウルフはまたたく間に相手に接近し、剣を振るった。

 防具に剣が直撃する。

 その衝撃は身体まで伝わったらしく、対戦相手はばたんと倒れた。


「しょっ、勝者、ベオウルフ!」


 あっという間の出来事だったので俺たちを含む観客たちは困惑していた。

 強い。

 そして、あまりにも無慈悲な戦い方だった。


「強いですわね、ベオウルフ」

「さすがは前回優勝者なだけあるのじゃ」

「でも、あのベオ、ちょっと怖いかもです」


 身内の戦いを見届けてから、いよいよ本格的にロッシュローブ教団さがしをはじめた。

 ロッシュローブ教団が狙うとすれば、貴賓席にいる王族だろう。

 観客たちを無差別に殺して大混乱を起こすのも考えられる。

 俺とプリシラは闘技場内部を、スセリとマリアは観客席と舞台を見ることにした。


 闘技場の内部を歩き回り、怪しい人物がいないかさがす。

 今のところ、そういった人物は見当たらない。


「アッシュさま。あそこに誰かいますっ」


 プリシラが遠くのほうに廊下を歩く人物を見つけた。

 あの先は貴賓席へと続く階段があるはず。

 一般人が用のある場所ではない。


 俺とプリシラはその人物のほうへ駆け寄った。

 そして、その姿がはっきりと見える距離まで近づくと、その人物は俺たちのよく知っている子だった。


「ベオウルフ!」


 貴賓席へと続く廊下を歩いていたのはベオウルフだった。


「アッシュお兄さん。それにプリシラ。ど、どうも……」


 ベオウルフはなんだかそわそわしている。

 動揺しているのは明らかだ。


「ベオ、そっちは王さまたちがいる場所だよ」

「えっ、そうだったの? 知らなかった」


 俺はひとつの疑念を抱いていた。

 ベオウルフはしらばくれているのか。

 本当はこの先に王族がいるのを知っていて、そこへ行こうとしていた。

 彼女が妙にそわそわしているのが余計にその疑念を強くさせた。


「で、では、ボクはこれで――」

「待て、ベオウルフ」


 そそくさと立ち去ろうとする彼女を引き留める。

 ベオウルフの表情から尋常でない焦りが読み取れる。


「ボ、ボクはその……」

「ベオウルフ。本当はこの先に用があったんじゃないのか」

「ち、違います……」


 俺に問い詰められて狼狽している。


「あの、本当にボク、急いでいるんです……」

「どうして急いでいるんだ?」

「い、言えません……」

「言ってくれ。言わないと、俺はお前を捕まえないといけない」

「そんな……」


 プリシラが不安げな顔をして俺とベオウルフを交互に見ている。


「アッシュさま。ベオを疑っているんですか!?」

「俺だって疑いたくない」


 けれど、ベオウルフは明らかに普通のようすではない。

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