70-7
またややこしい事態になってきた……。
ベオウルフがくすりと笑う。
「アッシュお兄さん、人気者ですね」
「人気者……なのかな?」
それから彼女は続けてこう言う。
「ですけど、アッシュお兄さん。きっとボクはお兄さんに恋すると思いますよ。お兄さんはすてきな人ですから」
真正面からそう言われて、俺は照れくさくなって頭をかいた。
「それはともかくとして、第4回アッシュの正妻争奪戦を開催するのじゃ」
「わたし、ぜったい勝ちますっ」
「勝者はわたくし、マリア・ルミエールですわ」
「せっかくですのでボクも参戦します。ボクが勝ったら将来、妻にしてくださいね」
「開催しないぞ……」
しかも、いつの間に3回も開催してたんだ……。
俺の正妻争奪戦は開催しなかったが、王都剣術大会はいよいよ開催の日を迎えた。
王都は大盛り上がり。
各国、各領地から観光客が押し寄せてきて、街は人であふれかえっていた。
お祭り騒ぎだ。
まともに歩くのもままならない。
三歩進めば人にぶつかる始末。
「いよいよですね、アッシュさま」
そして俺たちは剣術大会の会場である王都闘技場へとやってきた。
広い闘技場の中央に俺たち含む参加者は整列している。
屈強な男たちばかりと思いきや、女性や子供も混じっている。
……そして十中八九、この中にロッシュローブ教団が潜んでいるのだ。
それを見下ろすように、観客席の一番上等な席――貴賓席に王族たちがいた。
小さくてよくわからないが、目を凝らすときれいなドレスを来た少女がいる。
ラピス王女だろうか。
王さまが立ち上がり、俺たちを鼓舞する。
その声が闘技場に響き渡る。
手に持っている筒状の物体が、魔法で声を大きく響かせているのだろう。
「よくぞ集まった。勇敢なる剣士たちよ!」
参加者である俺たちをぐるりと囲むように観客席があり、人々で埋め尽くされている。
すでに闘技場は熱狂と興奮で盛り上がっている。
「今日まで磨き上げた腕を存分に振るうがよい!」
参加者たちが一斉に「うおおおおおっ!」と雄たけびを上げる。
これってもしかして、俺も叫ばないといけないのか……?
「え、えっと……。う、うおおおおっ――ですっ」
きょろきょろと周りを見ていたプリシラが控えめに叫ぶ。
「のじゃじゃじゃじゃっ」
スセリはひっくり返りそうなくらい背中をそらして笑っている。
「ぜーったいに優勝しますわよっ」
マリアはやる気だ。
「ボクもせいいっぱいがんばります」
ベオウルフは前回優勝者とは思えない謙虚な態度だった。
「よっしゃー!」
騎士のエレオノーラさんがこぶしを振り上げる。
俺たちに課せられた任務、ちゃんとおぼえているのだろうか……。
「ここに王都剣術大会の開催を宣言する!」
ついに王都剣術大会が始まった。
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