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それから俺とプリシラは無事に野営の場所に帰ってくることができた。
焚火が消えかかっていたので木の枝を何束か放り込み、火を強くする。
じゅうぶん暖まれるくらいの強さになる。
「あったかいですね」
プリシラの顔が火の明かりに照らされてオレンジ色になっている。
「交代で火の番をしよう。最初は俺がするから、プリシラは先に寝てくれ」
「いえっ。火の番ならわたし一人でできます」
「さ、さすがにそれは無理だろ……」
「できますっ。メイドですので!」
「メイドは関係あるのか!?」
「ですから、アッシュさまはおやふみふぉ……」
ふわぁ。
プリシラがあくびをして目をこする。
それからはっとなって赤面した。
俺はプリシラの頭に手を乗せる。
「交代で火の番をしような」
「は、はい……」
「時間になったら起こすから、それまでしっかり眠っておくんだぞ」
「かしこまりました」
プリシラはリュックから取り出したシーツにくるまってその場に横になった。
「おやすみ、プリシラ」
「おやすみなさい、アッシュさま」
目を閉じるプリシラ。
そうとう眠かったのだろう。まぶたを閉ざしたプリシラはあっというまに眠りに落ちてしまった。
両腕と両足を縮めて、丸くなって眠っている。
かわいい寝相だ。
揺らめく火を横目に、彼女の寝顔を眺める。
ふしぎといくらそうしていても飽きなかった。
まるで妹ができたみたいだ。
そう、俺にとってプリシラは妹みたいなものだった。
それを本人に伝えたら「めっそうもございません!」と言われてしまうだろうが。
「おぬしにとっては妹でも、プリシラにとってのおぬしはどうかの」
魔書『オーレオール』からスセリが出てきた。
「人の心を勝手に読むな」
「諦めるのじゃ。アッシュ。おぬしが『オーレオール』を手にしたその瞬間から、ワシとおぬしは一心同体と化したのじゃ」
「なら、一刻も早くスセリの新しい身体を見つけないとな」
「そういうことなのじゃ」
スセリは俺の隣に腰を下ろす。
「スセリも『オーレオール』に戻れよ。実体化できる時間は限られてるんだろ」
「なんじゃその言い草は。一人で退屈なおぬしの相手を――いや、退屈ではなかったのじゃったな」
「だから心を読むなって」
スセリの長い銀色の髪は鏡のように焚火の炎を映している。
ゆらゆらと燃える炎。
ぱちぱちと枝のはぜる音がする。
ごろんっ。
プリシラが寝返りをうって俺たちに背を向ける。
「アッシュ。おぬしはこれからどうするつもりなのじゃ」
スセリがそう尋ねてくる。
「どうって、依頼の魔物討伐と、セヴリーヌに会いに――」
「そうじゃない」
俺の返事を遮って、スセリは言葉を言い換える。
「おぬしは冒険者になった。依頼をこなして報酬を得て暮らしていき、それで最終的にどうするつもりなのじゃ」




