表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

487/838

70-3

 ベオウルフは表情を曇らせる。

 やはり、王都剣術大会に出場するのは乗り気ではないようだ。

 だから俺はこう尋ねた。


「ベオウルフの師匠に無理やり参加させれているのか?」

「いえ、無理やりではありません。師匠が望んでいるのはそのとおりですが」


 一拍置いてからベオウルフは続ける。


「師匠は楽しみにしているんです。自分の剣術を教え込んだボクがどれほど活躍するか。去年、優勝したときもとてもよろこんでくださいました」

「でも、ベオウルフ。自分の気持ちもちゃんと伝えたほうがいいんじゃないか?」

「自分の気持ち? ボクは別にイヤではないですよ」


 そう苦笑する。

 俺に負けず劣らずウソがヘタだな……。


「ボクには剣の才能があると師匠はおっしゃいました。だからボクは戦わなくてはならないんです。それが、孤児だったボクを拾ってくださった師匠への恩返しです」


 どうしよう。もう一押し、ベオウルフを説得してみるか。

 あるいは俺が彼に代わって師匠に話してみるか。

 そこまで考えて俺は思い直した。

 他人の事情に深入りするのは失礼だな。


「まあ、参加しようがしまいが別によいのじゃ。今年の優勝者は決まっておるのじゃからの」

「えっ」

「王都剣術大会の優勝者はアッシュなのじゃ」


 俺もベオウルフもプリシラも仰天した。

 なに考えてるんだ、スセリは。


「アッシュは『稀代の魔術師』であるワシのでしなのじゃ。常に頂点に立たねばならぬのじゃ」


 スセリが妙に自信があるということは、なにか企んでいるに違いない。


「アッシュお兄さん、そんなに強いんですか?」

「いや、ぜんぜんまったく」


 即座に否定する。

 俺なんて一回戦を突破できるかも怪しい。

 そもそも俺たちにはロッシュローブ教団をさがしだすという大切な任務がある。


「アッシュはこの前、騎士団で一番強い騎士を倒したのじゃ」

「それはすごいです」

「あれはまぐれだ。それか、エレオノーラさんが負けてくれたんだよ」

「でも、勝ったんですよね?」

「一応な」


 じっと俺を見つめてくるベオウルフ。

 真剣な目つき。

 俺の瞳に映るものをさぐっているかのよう。


「ど、どうしたんだ?」

「……ボク」


 ぐっと前のめりになって俺に急接近し、ベオウルフは真剣な口調で言った。


「ボク、アッシュお兄さんと戦いたいです」

「ええーっ!?」


 プリシラが大声を出して驚いた。

 俺もスセリも目をしばたたかせていた。


 俺と戦いたいなんて、ベオウルフはどうしていきなりそんなことを言い出したんだ。

 戦うのは好きではないと言っていたのに。


「アッシュお兄さん。ボクと戦ってください」


 繰り返しせがんでくる。

 俺はどう返事したらよいのかわからず戸惑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ