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69-7

 そう言ってベオウルフも俺とプリシラから離れる。


「今日はありがとう、プリシラ。本、大切にするからね」

「うんっ」

「アッシュお兄さんもありがとうございます」

「また遊びに来いよ」


 と言ってから思い至り、ある提案をする。


「俺たちがベオウルフの家に遊びにいくのはダメなのか?」

「うーん」


 考え込むベオウルフ。


「お師匠さんがいるからダメか」

「いえ、師匠はいいと言ってくれると思います。ただ」

「ただ?」

「ボクの家を見られるのはちょっと恥ずかしいです」


 ベオウルフははにかみ笑いを浮かべた。

 こういう笑いかたをできるんだ。ベオウルフ。

 つられて俺とプリシラも笑った。



 それから数日が過ぎた。

 王都剣術大会がだんだんと近づいてきていて、それに伴って王都はお祭りの雰囲気が増してきて、ただでさえ賑わっているのがさらにやかましくなっていた。


 夕食の買い物の帰り、カフェの前を通る。

 ベオウルフといっしょにお茶を楽しんだあのカフェだ。

 また、ベオウルフを連れてきたいな。


 そのときだった。視界の端、雑踏にまぎれて見覚えのある姿がちらりと映ったのは。

 ベオウルフだ。

 目を凝らしてもう一度彼の姿をさがす。

 しかし、見つからない。

 彼のことを考えていたから見間違いをしてしまったのかもしれない。


「アッシュお兄さん」

「うわっ」


 背中から声をかけられて、驚いて振り返る。

 俺の背後に小さな少年、ベオウルフが立っていた。

 間違いなく本人だ。


「驚かせてしまってすみません」

「今日も街に来てたんだな」

「はい。アッシュお兄さんに会いたくなって」

「プリシラじゃなくて俺か?」

「そうです」


 意外だ。

 そう言ってくれるのはうれしいが、どうしてだろう。


「もしや、またケーキが食べたくなったか」

「それもあります」


 以前見せてくれたはにかみ笑いをまた見せてくれる。


「ボク、アッシュお兄さんに勉強を教わりたいんです」


 彼は肩にかけていたカバンから、以前交換した数学の問題集を出した。

 そういえば前に約束したっけな。


「がんばって解いてみたんですが、わからないところがあるんです」

「後ろのページに解答例が載ってるだろ?」

「アッシュお兄さん、そういう冷たいこと言うんですか」


 ぷくーっとふくれっ面になるベオウルフ。

 い、意外と感情表現豊かなんだな……。


「ボクはアッシュお兄さんに教えてもらいたいんです」

「わかった。それじゃあ『シア荘』までついてくてくれ」


 そうして俺はベオウルフを連れて『シア荘』に帰ってきた。


「いらっしゃい、ベオ。今、お茶をいれるからね」


 プリシラは彼の来訪をとても嬉しがっていた。

 俺とベオウルフは居間のテーブルに隣り合って座る。

 肩が容易に触れ合う距離。


 ちらりと横に目をやる。

 ベオウルフの横顔。

 幼くてかわいい。ほっぺたもぷにぷにでやわらかそうだ。

 ベオウルフ、顔立ちは完全に女の子だな。

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