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69-1

 俺とプリシラ、ベオウルフの三人でカフェに入る。

 結構混んでいるな……。

 店内を見渡すとどの席にも客がいて賑わっている。


 メイド服に似たかわいい制服を着た店員に案内され、俺たちは奥の席に座った。

 メニューをテーブルの真ん中に広げる。

 ベオウルフは落ち着かないようすで、そわそわと周囲を見回している。

 緊張しているみたいだな。


「俺はコーヒーとチョコレートケーキを頼もうかな」

「では、わたしはココアとチーズケーキを。ベオウルフさまはなにになさいますか?」

「ボクですか?」


 自分を指さすベオウルフ。


「代金は俺が払うから、好きなものを頼んでいいぞ」

「では、お言葉に甘えて」


 ベオウルフはメニューを凝視する。

 真剣な目つき。

 子供特有の純粋さに俺はつい笑みをこぼしてしまった。


「あ、なにかおかしかったですか?」


 顔を上げたベオウルフが俺に問いかけてくる。


「いや、かわいいな、って思っただけさ」

「ボクがかわいいですか……」


 ふしぎそうに首をかしげる。


「かわいいだなんて、今まで言われたことなかったです」

「へえ」

「そうなんですか? ベオウルフさま、目鼻立ちが整っていますのに」

「そういう外見の話とかしたことがないので。友達とかいませんから」

「家族もいないのか?」

「はい。師匠ならいますが」


 剣の師匠か。

 話を聞くに、ベオウルフは剣の師匠と二人で山で暮らしているという。

 普段は勉強と剣の稽古に明け暮れる日々。そんな中で週に何度か王都へ遊びにいくのが許されているのだと彼は話してくれた。

 彼は生粋の剣士として育てられているのであった。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


 店員が現れ、その話は中断された。

 ベオウルフは慌ててメニューを見る。


「え、えっと……。お兄さんが決めてください」

「なら、イチゴのタルトとカモミールティーなんてどうだ?」

「えっと、それで、はい」


 よくわかっていないようすだったが、とりあえず彼はうなずいた。

 注文を告げると店員は去っていった。


「それにしてもすごいな、ベオウルフ。王都剣術大会で優勝するだなんて。えっと、年齢は――」

「11です」


 11歳の子供が、腕利きの剣士たちを退けて頂点に立ったとは……。


「別にボクはすごくもなんともありません。ボクからすればお兄さんのほうがすごいです。店員さんにすらすらと注文できるなんて。大人ですね」

「はいっ。アッシュさまはとてもすごいのですっ」


 ここぞとばかりにプリシラがずいっと前のめりになってベオウルフに自慢した。

 て、照れるな……。

 というか別に、注文するくらい誰にでもできるからな……。

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